Program 3:料理デモンストレーション(試食付き)[徳岡邦夫が考えるご飯]
講師紹介
日頃から実践しておられる金物の鍋で白米のご飯のおいしい炊き方を披露。その炊きたて(煮えばな)のご飯とともにサバの味噌煮を試食に供していただきました。
炊きたてのご飯、置いておくと味が変わりますよね。いい状態の時に、できるだけ召し上がっていただきたい。それをやれる方法を考えましょうということで、こういう面倒なこと(炊きたてを参加者各自がセルフで取りに行く方法)になってしまいました。申し訳ありません。
日本人は、最近、米のご飯を食べる量が少なくなったとはいえ、1日1回は食べていますよね。炊飯ジャーで炊いて保温になっているものを食べていると思いますが、炊きたてのご飯は違うんです。おいしいんです。日本料理屋で育った身ですから、炊きたてのご飯は経験があったのですが、リアルに「あ、おいしいな」と思ったのは、祖父で「𠮷兆」の創業者・湯木貞一の茶事に厨房の担当になったときです。茶事には食事もあわせて提供します。四つ碗、汁とご飯、向付をあわせて、お膳のご飯を炊く時、指示されながらやっていました。最初、四つ碗に出すご飯は「煮えばな」といいます。イタリアンでいう「アルデンテ」です。炊きあがった頃、火をつけて8分で沸いて12分たった時、20分後のものが0分になって、それからどうなったかを検証しましたが、0分よりあと3分早い段階、ちょっと芯のある状態、米のまわりに透明な熱い膜が一粒ずつにある状態、トロトロとなるようなご飯をイメージしてください。そういうのを食べたんです。もの凄くうまかった。「煮えばな」がおいしいのです。そういう状態のをぜひ提案しようと思ったものですから。
私どもは、生産者のところへ伺ったり、米屋と相談したり、他の料理屋と相談する中で「こういう方法がいいのではないか」と考えて、米を選び、ご飯を炊いています。店の中でも比較しながらです。今日はいいことを聞きましたので、ブレンドも試してみたいと思いました。炊き始めを15℃でやるのもいいかもしれません。今、私どもがしているのは、米を水で研ぐ段階で精米はできるだけ仕立てのものを仕入れます。米を洗うのは早い。水に溜めずにサッサッと流すだけです。精米技術が向上しているので、米に糠がこびりついていることはほとんどありません。生産者の作り方とか保管の仕方、脱穀の仕方、その後の、精米の仕方、精米してからの保管の仕方で変わってきますが。米を洗うのは、水を溜めて米を入れてサッサッとかきまぜてザルで上げ、また溜めているものに浸けてというのを3、4回やるくらいです。ゴシゴシは必要ないと思います。長く浸けておくと糠が水に溶けて、米に臭みがしみこみます。酸化しやすい。腐りやすい。そういうものはできるだけ排除します。あっ、もう出来ましたか、第一弾がきましたね。



(会場内に設置されたテーブルに、炊きたてが出来るごとに置かれていく)
徳岡 面倒くさくてすみません。順に取っていってください。セルフサービスで申し訳ないですが、よそったらすぐ召し上がってください。おかずがきてない。バタバタしていますが、話を進めたいと思います。
米は一粒一粒に個性がある。同じ生産者のもの、同じ産地のもの、同じ品種でも一粒ずつ個性があり、吸水の力が違うのです。そういうことを考えて、吸水時間を1時間くらいにしています。早いのも、遅いのも1時間で調整した段階で同じような吸水を受けるだろうと考えてのことです。だしで炊くご飯もありますが、その場合は水から一度上げて乾燥させて水を出します。できるだけ乾燥していないところにパッケージして1時間くらい置く。そしてもう一回、吸水し直します。水に浸けた後、1時間吸水するのと同じようになるのではないかと思います。通常は、火にかけるとき、水割を同割くらいにして火にかけると、17、18分でふきます。土鍋も使いますが、だいたい金属鍋で炊いています。8分くらいたつとふいてくるのですが、普通「赤子泣くとも蓋取るな」といいますが、実はパッと開けてみると、あまり対流するという感じではない。米粒それぞれに粘りが出てきて、ひっついているので、それをほぐした方がいい。下からの火力ですから、下の方が熱く、上はそれほどでもない。一粒ずつ同じ温度に触れさせるため、ほぐすと対流しないまでも、多少、湯が行き来する。一粒に対する熱と水と圧力が均等にかかるように、蓋を開けてかき混ぜます。一粒ずつ、できるだけムラのない愛情をかけたくて、「水」と「圧力」と「熱」を加えるのを配慮してあげたい。とはいえ、下から熱しているので下の方の熱量が高い。水は沸いても上の方で、だんだん下がってくると下に水が溜まる。下と上では出来上がり加減が違う。水は蒸発していきますから。そうすると、下が柔らかく仕上がって上はそれより硬くなる。混ぜるとムラになるので、上の部分だけを調整するようにしています。底のご飯は、お客さんには提供しません。
どういう米を使っているか。毎年、店でコンクールを開きます。生産者から直接届いたり、米を扱っているところや自治体からの推薦もありまして、それらを同じように炊いてブラインドテストをして、どれがいいかを決めます。基準は、香り、味、食感も大事です。食感の中には温度もかかわってきます。ご飯はおかずと食べるのですが、おかずといっしょに食べると香りや味はなくなります。ですから、食感を強く感じていると思います。食感には米粒の大きさ、含まれている水分量、温度もその中にある。熱々で食べるのと、そうでないのとでは違ってきます。そういうことも感じながら選んでいます。1年ごとの契約です。次の年はどうなるかわかりませんから、生産者もやりがいをもってやってくれます。新しいトライをして、もってきてくれます。決まったら、うちでその米を使っていることを公開していただいています。審査には、生産者にも来ていただいて他のメーカーと比較してもらう。そして、決まった米はどういうことで選ばれたかを考えていただく。逆計算して、次はどういう作り方をしたらいいかを考えてやっていただける。よりいいものを作ってもらうために、私どもも寄与できたらいいなと思ってのことです。値段設定は、一切、口出ししません。いくらでも買い取ります。しかし、保管の状況が悪かったり、実際の出来上がりがよくないと、そこで打ち切りです。と、話してますが、試食していただいて、どんな感じでしたか。



会員の質問 土鍋と鉄鍋の違いはどうお考えですか?
徳岡 土鍋でも鉄鍋でも、管理が出来ていれば同じだと思いますが、一般の方が土鍋で炊くのは難しいと思いますね。熱源が下からだし、温まりにくい。冷めにくいんですが。火にかけるときは冷たいままですね。温度15℃の水で火をつける。1000℃になる。底から熱くなって、ある程度熱しても上の方は冷たい。温度差がある。そういうのは、あまりよくないのではないかと思うのです。土鍋で炊くなら、湯を入れて沸かして土鍋全体を熱くしてやった方がいい。下から熱しながらも横からも熱せられる、保温するような効果があるのではないかと思います。オーブンで炊くというのもいいんじゃないかなと思いました。やってみないとわからないですが。熱伝導率がよいので、金属がいいのではないかと思います。銅とか金とか銀とか。熱伝導率は、銅よりいいのが銀、一番いいのが金です。私どもは、銅鍋に真鍮のコーティングをした金色の鍋で炊いています。金属は伝導率がいいので早いし、直接伝わるので時間が短縮できる。米にかかる熱量は早く温度が上がる方がいいように思いますので、一般家庭ではステンレス鍋でガスで炊かれるのが一番いいのではないかと思います。土鍋でやるなら平たい方がいい。熱が均等に伝わりますから。それに、湯を沸かして炊く方がいいのではないかと思います。なにより、一粒ずつに愛情を伝えること。水と熱と圧力を均等にムラなく与えることが大事だと思います。
冨田 鍋を横に広くということですが。そうなると、対流が悪くなるのではないかと思いますが。
徳岡 液体の熱が全体にかかるので米一粒ずつに熱が伝わりやすいと思うのです。米がまわるような対流はしない。水が循環する感じです。
冨田 沸騰する時に米もポンと飛んで循環することはありますが、ほとんど水の循環ですね。
徳岡 水が熱せられて動くので、水と熱が均等に一粒ずつにいくというイメージがいいのではないかと思っています。それに、金属の鍋は羽つきがいい。側面にも熱を集めてこれます。羽釜はそういう特質がある。そうなると、金属も平たい方がいいかもしれない。フライパンで炊くのもできるかもしれない。蓋つきのフライパンで。
杉本 アルデンテではないですが、芯は残ってないですし、一粒一粒、個性があるということがわかって、なるほどと思いました。一粒ずつちゃんと食感が違う。全部いっしょより、おいしかったです。僕は京都府福知山出身で、明智光秀が「世の中で最高のご飯とは炊きたての冷や飯だ」と、家来にわざわざ炊きたてのご飯を冷やさせ、暑い夏、冷たいご飯を食べるのが贅沢で一番おいしいご飯だと聞かされてきました。僕も好きで、夏はよくそうするんですが、モチモチした感じになります。福知山の宣伝で、すみません。
徳岡 現代だったらラップで包んで急冷した方が中の水分量が多いので、多分、おいしくなると思います。弁当のご飯は冷やして入れないとだめなので、水分が出ないように工夫することが必要です。たとえば、ゼラチンを入れたり、昆布だしでコーティングしたりとか。弁当の注文で何千人分となると、当日炊いてというのはできない。もっと他にやらないといけないことがあって、前の日からそういう工夫をします。この研究会のテーマに「冷めたご飯」もやらないとだめですね。昔、弁当は温かいうちに蓋をしてはいけない、腐りやすくなるからといわれました。水分がないとパサパサになっておいしくなくなる。ご飯にしてもおかずにしても、急冷させて水分を飛ばさないようにするのがおいしいものになると思います。ビニール袋に入れて冷凍庫に入れる。水分が飛ばないで冷える。このヒントは一般家庭でも使えるかもしれませんね。それではこんなところでよろしいでしょうか。

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