Program 1:講演:「人を集めるために大事なこと」
講師紹介
阪急百貨店で数多くの人気物産展を手がけてきた豊富な実績をもとに、人を集めるために大事なこととは何か、実践的な講演を写真をスライド投影しながらおこなっていただきました。以下、その抜粋です。
●百貨店に人が集まる理由
ものを売る時代はもう終わっています。もので人は買い物をしなくなっています。背景にあるコト要素、こんなつくり方をして、こんな人がつくって、こういうふうにお出しして、だから買ってみようかな、となる訳です。例えば、最近はお米でもどこの産地で、誰がつくったかまで踏み込んで、つくっている場所、その生産者によってものが売れる時代になってきています。お客さまが選ぶ時代、私たちが選ばれる時代になってきています。そうした環境の変化への対応が求められているのです。
百貨店になぜ人が集まるか。百貨店だと安心、クオリティ、グレード、いいものがある、半歩先の憧れのコト要素がある。いつもほしいものがあるというのが百貨店です。それは、もう日常的なことなんですね。さらにイベンティブなことが毎日ある。何があるか楽しみ。そこにワクワク感、ドキドキ感がある。それは催し会場、阪急百貨店でいうと祝祭広場とか各階に「コトコトステージ」を設けています。そこではものを売るのではなく、コトを売りましょうということです。非日常的なことがあるから行く訳です。みなさんも小さい頃、お祭りは楽しみだったはず。その楽しみは日常的ではない。非日常があるからワクワク感があるのです。百貨店もデイリーな毎日のプロパー商品でいかにワクワク、ドキドキさせるか、非日常的なことをやらないとだめだということです。
●百貨店が催しで狙う効果
百貨店は催しで人を集めてシャワー効果で各階に人を降ろしていきます。ところが、催し自体の収支は結構しんどいです。宣伝費とかも必要ですから。そこで、耐えられなくなって催しは止めようという百貨店も現れています。阪急百貨店はそうではなく、催しで人を集めようと考えています。効果としては集客ですね。上階に来ていただきシャワー効果でプロパーも買っていただく。来るきっかけを催しで提供するのです。実際、催事の売上よりシャワー効果のプロパーの売上効果が高い。食品の催事や北海道物産展の場合は、下階にお客さまが行かれる率がかなり髙いです。催し会場でも買う、プロパーでも買う。特に何を買っていると思いますか。一番はなんと化粧品なんです。催しにも行くけど、ついでに化粧品も買っていく。もう一つは食品、食品の催しでありながら地下の食品売り場で買って帰る方がいらっしゃいます。催しは併売率が高く、シャワー効果が大きいと思っています。
●お客様が期待すること
新しい催しでは地域とのつながりも考えます。お客さまは催しに何を期待されているか。今はテレビとか雑誌とか情報が多いので「知っているけどまだ食べたことない。いっぺん食べてみたい。その土地の方々とおしゃべりしたい」という欲求がある。その土地の食文化ですね、「知らないことを聞いてみたい知りたいな」と思っている。そうした期待に応えてくれる非日常的な催しが楽しいから行きたい、楽しくなかったら行かないですよね。みなさん方のお店でも、楽しいことが大事な要素だと思います。
●商品力×宣伝力×販売力
商品力、MDは大事です。ものの力があります。いいものをつくっていても宣伝しないと伝わりません。マスコミを含めて宣伝は商品を知ってもらうためには必要です。それから販売力。いい接客、楽しい接客は、ウキウキしてサイフの紐もゆるんできます。そういう3つの要素がないとうまくいきません。ものが溢れている時代、つくり手はお客さまから選ばれるためにそのものの価値を独自でつくって、伝える発信が必要です。話題を提供し続けることがお客さまが来る要素にもなる。やり方としてはいろいろありますが、最近はSNSとかラインを使っての情報発信もしています。
●私がいろいろ仕掛けた事例から
まず、チーズの有料試食があります。メイドインジャパン北海道のチーズ。これまでは細かく切って「試食をどうぞ」と渡していましたが、ある時、チーズを焼いてパンにつけて出したんです。それでふっと気がついたのが、有料試食。お金を払って試食してもらおうという考えが浮かびました。それには何がいいか。北海道でジャガイモの上にチーズをかけるラクレット、それをやってみようと。ラクレットを有料で食べてもらい、おしいかったらすぐそのチーズが買えるシステムにしてみました。チーズの販売額は一気にそれまでの2.5倍まで、売れるようになりました。
食べ方の提案もあります。椎茸屋さんが「こんな大きな椎茸は売れない」と困って相談にこられました。おかしな話ですね、食べたらすごくおいしいのに規格外の商品は売れないんですよ。どうしたらいいかと思い、まず名前をつけました。アイディアを出しあい、決まったのは「王さま椎茸」。王さま椎茸のイメージをメインディシュになる椎茸としてやったわけです。椎茸をメインディシュにすることでバターとか北海道を連想させる。椎茸だけで1週間に何百万円も売れるわけです。お客さまは椎茸は知っているけど、こんな大きな椎茸があることは知らないんですね。普通は鍋とか、副素材になっているものをメインディシュにする提案がお客さまに響きました。おいしさを知ったら普通の椎茸は味わえないと、これを目的に朝一番に来られるお客さまがいるくらいです。
行為を知ってもらうという方法もあります。例えば、イクラは鮭の卵からできていて、ツブツブは知っていますが、イクラをどうやってつくるかは誰も知らないんですね。そこで、お客さんの前で筋子をイクラにするのを見せる。そういう行為が楽しい。「そういうふうにできているの、イクラって最初からツブツブではないの」と知ることが楽しい。だからお客さまが来る。行為を見せると買うという行為に変わっていくのですね。
例えば、このアップルパイはリンゴ農家の人がつくっています。甘いリンゴ、酸味のあるリンゴ、シャリ感のあるリンゴなど5種類のリンゴを入れてつくったものです。三角形のアップルパイです。みなさんアップルパイは知っているんですが、5種類のリンゴを入れているのは初めてです。初めてのことはいっぺん試してみたいと思う。知っているんだけど、「へぇ、新しい感覚よね」というのが売りにつながる。これは1日4000個売りました。こういう5種類のリンゴがありますということが伝わると「一度、食べてみたいな」と思うわけですね。他に、3種類のリンゴを籠に盛ってお客さまに選んでもらって生ジュースで飲んでもらう。それもすごく売れました。知っているようで知らないものはいっぺん試してみたいんです。それがよかったらリピーターになってくれる。催しではリピーターが大事です。一期一会でもういいではなく、いかにリピーターを増やすか、これが催しのキモになります。
新しいことの提案例から。最初に沖縄展をやった時はあまり売れませんでした。でも、不思議と来年もやろうとなって、顧客分析してみますと40代が買っている。そこでターゲットを絞り直しました。30代のニッチなところでいい。沖縄好きの人だけに買ってもらえばいい。同じくらい売れたらいいと思ったんですが、アセロラジュースを見つけました。沖縄でとれるアセロラのジュース。商標登録されていますのでアセローラといいます。生の絞ったジュースは誰も飲んだことがない。アセロラジュースは聞いたことがあるでしょう。やってみました。ジュースに酸味があるので生クリームをつけたり、実をシロップ漬けして上に載せたりして。ターゲットは30代です。かわいくつくりました。かわいいは、30代のキーワードの一つです。すると、30代のお客さまが来られまして、売上げも順調に推移いたしました。5カ年計画1億円と思ったんですが、来年で達成しそうです。それはどういうことか。催しはターゲットをしっかり絞った方がお客さまにはわかりやすい。商品力も宣伝力も販売力も絞った方がやりやすいということです。
ありがたいことに、阪急百貨店には夕方のOLタイムがあります。御堂筋のOLが阪急百貨店に来ていただく夕方6時から売れる。1日の売上を時間別にとると一番多いのが2時~3時、その次が6時~7時です。百貨店でも、ふた山を狙っています。
阿蘇の赤牛がありました。どうしたら売れるかと考えたんです。赤牛は肉が固い。柔らかくするためにどうするか。1週間昆布漬けにして、肉にうま味を加え、薄くそぎ切りにして、肉の握りにしてみた。そうするとすごくうま味と食べやすさの両方を味わえた。ライバルの肉屋さんの駅弁が1260円で売れていたので、それ以上の値段では負けるなと、8貫1260円の弁当をつくりました。結果は牛を何頭殺したかというくらい売れました。どうやって売ったらいいかを考えることも売上につながりますね。いい例です。
ある時、北海道でシシャモの天ぷらを食べたら、ものすごくうまかった。今まで食べた魚類でも味があるなと思い、シシャモを生で出すことにしました。シシャモはオスの方が香りもあっておいしい。そこで、宣伝の一面にシシャモを並べて「シシャモのオスはうまい」とキャッチコピー。多くの人がシシャモは生で食べたことがありません。結果は1日に通常の約3倍も売れました。「へえ、オスはそんなにうまいのか」というので売れたのです。知っていることを少し変化させてやることで集客にもつながり、売上にもつながる。知らないことを知る。学びが百貨店にあると集客ができるのですね。
百貨店によってはいろんなことを考えてやっています。ものを売るのではなく、その背景にあるコト要素を売ることでやっていますので、よろしければぜひ覗いてください。

