Program 2:トークセッション(後編)
講師紹介
料理デモンストレーションが終わった後、今回のイベントを企画した「関西食文化研究会」のコアメンバー門上武司(フードコラムニスト・「あまから手帖」編集主幹)の進行により、全員そろってトークセッションを行なう。来場者からの質問にも答えながら、話題は多彩な広がりをみせた。

質問 皆さんに教えていただきたいのですが、硬水とか軟水とか、日本の中でも地域によって違うと思いますが、水に対する考え方は。
門上 水については皆さん、どういうふうにお考えですか?
村田 昆布は硬度60度以上ではだしが出にくいという実験の結果もあります。私の場合は軟水でないと、なかなかできないですね。フランス料理みたいに、魚の頭をばんばん入れて、グツグツ炊いても、日本の水だったら飲めないくらい生臭くなりますけど、ヨーロッパの水ですと生臭くならない。旨味だけがうまく出ているということもあります。硬度が高いということはカルシウムとマグネシウムが多いということです。何が良いか、どの料理にどれが良いかというのは言いがたいですけど、その国の料理はそこの国の水に沿ってできてきているものだと思います。
門上 中国料理の場合は乾燥させたものを運んで、各地で料理を作っていく方法がありますが、その中で魏さんはどういうふうに水をとらえられますか?
魏 僕は横浜中国街出身です。横浜の水と京都の水は全然違うんですけど、中国では乾物を戻す水をだしにしていきます。乾燥あわび、干し椎茸、干しエビ、干し貝柱だったり。いろいろ足して入れていくので、中国では水は全然こだわってないんですが、僕の中ではだしをとるには軟水が一番おいしいですね。特に京都は水がいいかなと感じました。
門上 上村さん、イタリアの水と日本の水はちがいますか?
上村 粉との相性なのか、イタリアでは硬水の方だと思います。リゾットに関してもそうですが、一度、いろんな米を使ってみようという時期がありまして、軟質米と硬質米を探して、硬水で硬質米を炊いたり、軟水で硬質米を炊いたり、4つのパターンを試してみたんですね。その時にイタリアの米を使って硬水で炊いた時は、一つひとつの粒の形がしっかりした感じで、食べた時にギュッとする。イタリア人は米は野菜だという。触感がいいというのがスタイルとしてあるんだなと感じました。リゾットではそういうふうにしたり、粉と水の相性をどうするかと、ソースによっていろいろ試行錯誤していることは確かです。



門上 硬質米と硬水との話が出ましたけど、山口さん、神戸は宮水ということも含めて、フランスとの違いはどうですか?
山口 日本料理でだしというのは水なのかな。水の中に旨味成分が混ざっているのかなと。基本的にはフランス料理は旨味を抽出する媒体として水を使うんですが、結果的にソースになった時には水ではなくなっている。水はどこかにいってしまって、肉のだしとかに変わってしまっているので、そういう意味では全く違うのかなと思います。
門上 反対にひょっとしたら日本の水に硬水を少し混ぜるとまた違う結果が生まれてくることもあるんですね。可能性としては。
山口 あると思いますし、アルカリイオンになるか酸性かで、ずいぶん違ってくるので、アルカリイオン水でだしをとって試してみたり。いつも試行錯誤はしていますね。
門上 一度、硬水と軟水をいろいろ混ぜられて、だしを引いたりとか、野菜を湯がいたりということをやられたこと、ありましたよね。水だけでもテーマにすると、また違うことができるのではないかと思っています。今回、だしをテーマにした第1回イベントですが、テーマをいろいろ変えて、回数を重ねていきたいと思います。
村田 例えば、フライは各国であるんですけど、ヨーロッパはフリッターになる。中国もそれに近い。それぞれの国にそれぞれの粉があって、それぞれ違う。同じ米の粉でも、中国料理は日本の粉ではできない。各国で同じような油で揚げる料理法があるんだけど、使っている粉が全然違うのに、それを誰も検証したことがない。
門上 粉と揚げることの関連性で言うと、日本の天ぷらの場合は水を冷やしておいて、粉を溶いて、すぐに揚げる。中国の場合は種を寝かし、寝かして練りこんで発酵させていく。
魏 揚げ饅頭とか作る時、粉を腐らす。腐らせたものを大事にとっておいて、それを少しずつ足していって揚げものを作ったりするんです。寝かすこと、玉子を使うことも多いですね。



門上 上村さん、粉と揚げるということについては?
上村 基本的にイタリア料理のフリッターは、小麦粉をつけて、そこにハーブとかで香味を変えるんですけど、日本料理の天ぷらを彼らは知っていますので、いかに軽やかに仕上げるか。僕の考え方は天ぷらというのは食材の旨味と水分を閉じ込めて、開けた時に、ふわっとする香りで、おいしいという。食感もあると思うので、そこを大切にするのはイタリアでもしっかり考えているところはあると思います。
門上 揚げものの食感はいろいろあるし、粉に味をつけたもので衣にするのもあります。フレンチの場合はフリットになる。
山口 フレンチでも、粉を使えればいいなと。デザートでは粉を使いますし、フランスは粉の種類がたくさんあるので、使い分けで全く違うものができます。
門上 大阪には「粉もん」があって、粉もんに、だしが入っているわけで、粉だけではないんですが。粉というテーマが一つ。フランスでは粉というのはパンの中ではあれだけ重要視されているのに、料理になると粉の存在は違うんですね。
山口 パン文化でパンがあるから、料理の粉にこだわる必要がなかったわけですね。
門上 テーマが1つ、2つ出てくると、また今日の4人の方々にも参加いただいて、いろんなデモンストレーションができると思います。「関西食文化研究会」で何かやろうということにつながっていけばと思っています。
これからいろんな会場で、いろんなことをしていきたいと思っています。秋には次のイベントを企画しています。ぜひとも皆さんには、また参加していただきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。
「関西食文化研究会」では、交流をテーマに
今回のようなイベントを順次展開していきますので、ご期待ください。


