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「昆布とQ&A」Program 3:講座とディスカッション「料理のサイエンスQ&A」<全記録>10/11

「昆布とQ&A」Program 3:講座とディスカッション「料理のサイエンスQ&A」<全記録>10/11

Program 3:講座とディスカッション「料理のサイエンスQ&A」<全記録>

講師紹介

Q1:油(&脂)の酸化について

質問者:犬伏 義仁さん
「ワインバー・ピコレ」
  • 例えばあるシェフは、アーリオオーリオ・ペペロンチーノを作る際、弱火でニンニクが色付くくらいまでオイルを熱するとそのオイルはすでに酸化していると言っています。それがほんとなら、ほぼ全ての料理が酸化したオイルをベースにできているということに・・・。
  • 酸化って、油&脂で科学的にいろいろ検証され、わかりやすくデータ化されているのでしょうか?
  • 強火で炒めると、特にオリーブオイルはどういう状態で酸化するのでしょうか。味が、どう変わっていくのかという質問です。

Answer (2/2)

もう一つ、酸化がいいのか、悪いのか。体にとっての話ではなく、おいしさにとっての話です。酸化しないという状態はありえません。酸素は分子レベルですから、たとえ1斗缶に入っていても、どんどん酸化はします。油の中にビタミンEが入っていまして、酸化しにくい状態になっていますが、どんどん酸化はしていきます。実験で使うような、全く酸化してないオイルもありますが、かなり高価です。一般の料理に使うものは必ず酸化をします。つまり、酸化は通常はそこまで気にする必要はないのかなと。イタリアンで使われるオリーブオイルは酸化がしにくい。そこまで気にする必要はないのではないかと思っています。
もう一つ、大豆油にあるリノール酸。熱酸化するとデカジエナールというアルデヒドが出てきます。アルデヒトはいろんな種類があっていやな匂いもあれば、いい匂いもある。大豆油に含まれるリノール酸が熱酸化すると好ましい揚げ油臭という表現をされます。大豆油で揚げ物をした時の独特の強い香りが、この成分によるものです。
油の香りで、もう一つ見つけたのが、オリーブオイルはイタリアンで最後にさっとかける。なぜ最後にかけるか。香り成分は油に溶けるものと、水に溶けるものがあります。油に溶けているものは油の中に溶けやすいものですから油の中に置いておくと、匂いがしないはずです。溶けやすいということは、その中にあるということです。オイルに溶けている香りをよく感じるようにするためには、水と接して初めて香りがする。香り成分の感じ方を調べるのに2種類の閾値の調べ方があります。油だけを嗅いで感じる。水に落とした時に感じる。両方調べる必要があります。油に溶けている時の閾値は高い。あまり感じない。水に落として初めて水との境目で油が感じやすくなる。イタリアンで最後にさっとかける。しかもスープは水です。水の上に油を落とすのは一番香りがたちやすい状態のはずです。テクニックの一つだということです。

脂質の酸化の話で、香辛料によって酸化が進むことがあるか。シナモン、クミン、ジンジャー、ナツメなどのスパイスは自動酸化を促進する。自動酸化は置いておいただけで酸化する状態、オイルにスパイスを入れて置いておくことがあります。その時にシナモン、クミン、ジンジャー、ナツメグとかは酸化を促進させてしまう可能性がある。ローレル、パプリカ、ローズマリーなどは抗酸化作用があります。このへんを入れておくと酸化を抑えてくれるということです。
クローム、ローレル、セージなどは熱酸化を促進する。オイルを加熱する時に、これを入れると熱酸化が促進されるようです。ただ酸化が悪いとはいいませんが、それで出てくるいい香りもあるので、実際やってみられて、いいか悪いかを判断されればいいわけです。

これも仮説ですが、ニンニクオイルを加熱すると何が起こるか。イタリアンの場合は常温から加熱しますから、最初40度くらい。最初にニンニクとタマネギはジアリルジスルフィドというS(硫黄)を含む成分が酵素によって生成されます。酵素は40度くらいで活性が高くなる。さらに70度になるとタンパク質である酵素が失活します。反応を起こさなくなります。100度になると水分が蒸発してさらに細胞が破壊されて乾燥が起こります。油に溶ける香気成分は油に溶けていく。オリーブオイルそのものは酸化しにくいですから、そこにニンニクの香りが移っていく。これがニンニクをオイルで加熱すると何が起こるかということの答えだと思います。

そこで提案です。温度を厳密に管理して行う調理、肉を低温で58度で加熱する。そういう考え方を応用すると、オイルを何度にするかによって香気性が変わってくる。火の上において低温で加熱する。50度くらいでニンニクを加熱することをすれば酵素がどんどん働く可能性もあります。一旦、50度くらいで置いておくとか。
中華の場合はこの反応は起こりません。一瞬で水分が蒸発するので、イタリアンのニンニクを炒めた香りと中華の香りは違います。それは酵素反応が起こっているか、いないか。中華の場合は細かく切って炒めることが多いので、その時点で酵素が働いている可能性がある。どのくらい働いているかは、わかりません。そういう複雑な事情もあるということで。丸のまま加熱すると違ってくる。丸のままニンニクをオイルに入れると、その時、酵素は中で反応しますから、また違うものになるでしょう。

温度と熱酸化については、150~190度では2分で急激に酸化が進みます。260~330度では30秒でも酸化が進みます。中華鍋をガス火において加熱すると、ほんの30秒で、大豆油の酸化が進んで、大豆油はいい香りがするので、中華で、大豆油を高温で加熱すると独特の香ばしい、いい香りになっているのではないかと。逆に、イタリアンでオリーブオイルを高温短時間でやったら、どんなものができるか。また逆に、中華料理で大豆油を低温で長時間やってみれば、どんな料理ができるかというのは個人的な興味です。

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