Program 3:講座とディスカッション「料理のサイエンスQ&A」<全記録>
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Q4:中華だしと和風だしの違い
- 和のだし(昆布や鰹でとる)と中華のだし(金華ハム、干しエビ、貝柱などでとる)との違いはなにか。
魏さん:「だしサミット」の時に村田さんが、昆布だしを半分にしてポークを使えとの話。やってみると、おいしかった。で、どう違うのか。金華ハムと昆布だしとの違いを、もうちょっと明確にしたいなと思って。よろしくお願いします。
Answer

味と香り成分を分けて考えたいなと思いました。 あるデータによると、分析値がありました<図3>。IMPはイノシン酸です。それを測ったデータです。中国製の鶏だし、この研究者たちは中国まで行って有名店からスープをもらってきて分析をしたんです。中国の店でとっただし、真ん中が、日本の中華料理屋さんのだし、下が鰹と昆布だし。いろんな店の平均値です。
平均するとイノシン酸は3つでほとんど違いはありませんでした。グルタミン酸については中国製の鶏だしはドーンとグルタミン酸の濃度が高かった。うま味成分の濃度とは大きく違うように思われますが、彼らの論文では中華のだしの場合は、結構、中国ではグルタミン酸を入れることがあるといってます。うま味成分をそのまま入れてしまう。もともとは鶏からとっているわけですから、そんなに違うはずはない。日本のものは赤とオレンジとそんなに違わない。うま味成分は違わない。乳酸を測ると、日本製は高い。鰹昆布だしは半分以下です。鶏だしの方が乳酸が多い。
違いで大きいのは油です。中国では、朝つぶした鶏を買ってきて、老母鶏でだしをとる。脂肪がまっ黄色で、一杯脂がついたものを使ってだしをとる。油が多い。日本製鶏だしでも油が多い。鰹昆布だしは油が少ない。鰹にも昆布にも油がほとんどないので、入る要素がない。中華のだしは最後に浮いた油をとりますから、だし自体にはないかもしれませんが、鶏だしの脂肪が多いとすると、脂肪性の香気成分の溶け具合が、また違ってくる。日本のだしは水溶性の香り成分が多い。鰹節に含まれる燻香も水溶性なので、鰹だしは燻製香が強い。中華のだしは油が入っていて、それに溶けている。メイラード反応の香ばしい香りもある。香りが違うと思います。香り成分の分析値はないんですが、脂溶性の香気成分があるということはいえると思います。

他にもアミノ酸がありますので、鰹昆布だしはアスパラギン酸、ヒスチジンが多い。鶏だしの場合は他のアミノ酸が多いんです。それによって複雑な味、シャープではないが、複合された味が感じられる。鶏だし、肉系のだしにはこれが起こります。フレンチのだしでもイタリアンでも中華のだしでも鶏でとるようなものには複雑なうま味があるということはいえます。アミノ酸は味があるんです。それぞれのアミノ酸にはうま味ではない味があります。甘味と酸味と苦味がいろんなバランスであるので、アスパラギン酸は甘味があります。バリンやセリンは苦味があります。いろいろとあって、このへんが加わることでどんどん味か変わってきます。
香りについて。金華ハムですが、その特徴として水分が少ない、23.9%と他の生ハムと比べて低い。イノシン酸とアミノ酸が多い。カビ付けをしますとカビが持っているタンパク質の分解酵素によってタンパク質を分解してアミノ酸にどんどん変える。さらにイノシン酸の分解酵素は低活性なので、イノシン酸は分解せずに保っておく。脂肪分解酵素は鰹節と似ています。出てくる香り成分も似てくる可能性がある。金華ハムのうま味と香りはちょっと鰹節を思わせるような時がある。村田さんの中でそういうのがあったかもしれないと思います。
鰹昆布だしの味はグルタミン酸とイノシン酸のシャープなうま味、香りはメイラード反応の香ばしい香りとフェノールなどの燻煙香がする。鶏湯とか上湯のだしの場合はグルタミン酸とイノシン酸に加えてさまざまなアミノ酸の複雑なうま味と、メイラード反応の香ばしい香りと油の香りと、さらに酸化した油の香り。この3つの複合したものが今のところいえることです。
魏さん:めちゃめちゃ、わかりました。ありがとうございました。だから合うんだなということかわかりました。
川崎さん:合うと判断しているのは日本人で、合うということは香りの相性、日本人が、鰹と昆布のだしで育って、それで合うという。中国人も鰹だしをおいしいという可能性もあるかなと。
魏さん:あると思います。昨日まで台湾に行っていて、スープを、そういうふうに作って飲ませたんです。ラーメンのスープを。何のだしを使っているか。昆布と金華ハムを使ってだしを作ったんです。皆にびっくりされました。
川崎さん:香りには好き嫌いがある。うま味は世界中どこの人も好きなんです。動物も好き、塩味も好き、甘味も好き。味成分の好き嫌いは動物共通に好き嫌いは決まっている。ところが香り成分については文化による部分が大きい。日本人が好きな香りとヨーロッパ人が好きな香りは違う。アジアは近いと思いますが。


