Program 2:料理デモンストレーション [日本料理]
講師紹介
関西食文化研究会コアメンバー
「海老芋とフォアグラの蒸し煮トリュフ餡」

海老芋を六方に剥きます。そして、湯がいてアクをとり、水で晒します。そうしたことで、本当においしくなるのか、はなはだ疑問です。食感だけ残って、芋の風味がなくなっているわけですから。和食の調理法には、そういう話が多くあるのです。アクはほんまに悪か。昔の調理法では、アクを抜いて、だしでうま味を乗せていったんですが、もとの持ち味を生かすには、それでいいのか。アクは、ある程度コントロールしないとあかん。うま味もコントロールすることが必要。何でもかんでも、アクを抜いてしまい、うま味を加えたらおいしくなるという考え方はおかしくないか。それよりも、芋は芋の味がする方がいい。日本料理も、そういう話になりつつあるように思います。
次に、追い鰹。鰹を一緒に煮汁の中に入れる。剥いたものを直接、つけ汁に入れて、蒸しますと、煮崩れしません。京料理の場合、南京など固いものの面をとって炊きますが、ものすごくやわらかくなるのが技術なんです。けれど、今や、スチコンに入れておけば、勝手にやわらかくなりますよ。和食の料理人の場合、師匠から教えられた以外のことをしたらいかんとなりがちですけど、昔の考え方がほんまに正しいのかどうか、検証しないといけません。京大の「日本料理ラボラトリー」という研究会で、科学的な検証をすると、いろいろわかってくる。例えば、青いものを湯がく時に、塩を入れるでしょう。なんで塩か。昔は、塩にニガリで塩化マグネシムが入っていました。塩化マグネウムは葉緑素の定着に関係あるけれど、今の普通の塩の主成分、塩化ナトリウムにはそういう効果はない。ここにいる皆さんも、青いものを湯がく時に塩を入れると思います。普通の塩では、だめなんです。ニガリをピッピッと入れる方がいい。
和食の場合、芋類を湯がく時、3種類ある。酢、米のとぎ汁、糠。何を何で湯がくかは、ファジーなので、その時の感覚で使いわけています。酢で湯がいたら、真っ白に上がり、周りのタンパク質がカチッとなる。糠で湯がくと、酵素の加減か、黄色がつきますけど、やわらかくなる。米のとぎ汁は漂泊効果があるのか、白くなって、酵素の要素も多少あるのか、やわらかくなっている気もしますけど、水でも同じかなという程度です。



蒸し煮こみの時、柚子とかネギとかゴボウを入れたら、そのものの香りがつきます。今だったらそんなに仰山煮汁使わんでも、真空調理して、60℃で15分蒸したら油が浮きます。油を全然流出ささんと調理をしたら、おいしくなるかどうかは難しいでしょう。和食の場合、油けが多いとしつこいですから、油を適当に抜かないといけません。60℃で15分やると歩留りは悪くなりますけど、あっさりする。あっさりさせるのが、和食にとっては重要なんです。最終的にフォアグラをどうやったら一番うまいか。生で食べるのがうまい、そんなことをすると和食は続けられへんから、60℃で火入れして、油を抜いてしまう。そのかわり、醤油とか和食の調味料の味をしみ込ませる。
芋だけを蒸し上げて、もういっぺん再加熱して、あとからフォアグラをちょんと乗せる。餡のもとは、だしです。だし180ccに、1gの塩と5ccの薄口醤油。塩分濃度は2%程ですので、吸いもんくらいの味がついているはずです。餡にする時は、薄口醤油の半分程度の味醂を入れます。葛を半分の水で溶きます。葛の場合、粉くささがあるので必ず煮立たせます。今日は暖かいので、ちょっと薄めにしました。
以上、一応、蒸しもんです。日本料理らしさを求めて最終的な仕上げをどうもっていくか。その料理人が考える設計図がどうなっているか、という話です。蕪蒸しは、昔はグジでやっていたのです。今は、スッポンとか、フォアグラとか、いろんなもので蕪蒸しを進化させられます。海老芋でも同じ原理ですから、そういう点では処理の仕方によってフランス料理になったり、中華料理になったり、日本料理にもなるということです。


![「蒸す」Program 2:料理デモンストレーション [日本料理]](https://food-culture.g.kuroco-img.app/v=1774927649/files/topics/611_ext_2_0.jpg)