Program 2:料理デモンストレーション [日本料理]
講師紹介
「豆乳を酸で固めて」

日本料理では、酸性のすっぱいものは酢の物に使うことが多いです。酸を使うと、鮎の骨とか柔らかくなりますけど、ばらばらになるというデメリットがある。すっぱさを利用する以外に酸を使うのは、あまり多くありません。例えば、イカのすり身を棒状にして酢酸の中に漬ける。ゆっくりじわじわ中まで酸で固まってきて変わった食感のすっぱい感じの料理があります。また、鯛の白子を酸に入れて炊きます。白子は熱を加えると皮がはじけやすいので予め酸を入れて湯掻いたりすると、はじきにくい。炊いたり、焼いても皮がはじけにくい。蟹の甲羅、小腹を漬けておくとぺらぺらになって、上下ひっくり返すと、きれいな蟹の形が器にできたりします。
今日は変わった酸の使い方で、ヨーグルトを使ってタンパク質を固めますが、日本料理では酸で固めるという料理はないのでチーズを作ろうかと。それをもとに今日はデモンストレーションしたいと思います。
これが豆乳クリームです。濃度が高い豆乳で、遠心分離機にかけた豆乳です。試食で飲んでもらいますが、かなり濃厚な味がします。これを料理に使おうということです。今日は豆乳を酸で固めてみました。前菜のようなスープみたいな一口でつるつるっと飲んでもらうほうがいいかなということで、箸休めみたいなものを作りたいと思います。

酸には梅酢を使います。今日、試食分を作るのに梅酢がこれ1本使ったんですよ。でも、思ったよりも梅酢は合ってましたね。豆乳クリーム500ccに対して梅酢を60cc入れます。そうすると大体同じように固まります。梅酢というのは辛いとかいろいろあるんです。すっぱさが勝っているものとか。調整しないと分量だけで固まってもこのままこれがおいしく食べられることはないんですね。すっぱいと思うかもしれませんし、塩辛いと思うかもしれませんし、白和えにするにしてもスープにするにしても調整することが大事なところです。辛い場合はだしでのばす。塩辛い場合もだしでのばす。思ったよりあまり固まってない。そんな時はこの上に重石をのせて調整して作ります。
気長な料理ですから、脱水させて固めている間、それを置いておいて、いざ作る時になったらだしを濃口醤油、薄口醤油で加減する。辛いと、だしは薄めの味付けをします。だしは濃いめなんですね。鰹と昆布ですけど、鰹が効いている、薫香しているほうが絶対おいしいんです。イメージの中では追い鰹を使っただしで味をつけたものをゼラチンで固める。ゼラチンにしたのは口の中で低い温度で溶けるということがあるからです。寒天だとなかなか溶けません。ゼラチンであわすと先にゼラチンが溶けて、ちょっと薄いゼラチンのだしやなと思っているところにネタッーっとした味がしてちょうどいいかなと思います。

今の時期、真竹をちょっと上に散らそうと思い、真竹を使いました。これも薄い梅のだしで炊くというか、一煮立ちして漬けたもの。次にこれを蒸しあげていくんですね。鰹が入るとどうしても液体が濁る。僕はいつもそれを考えていて、どうしたらもっとクリアになるのかと、いろいろやるんですけど、クリアになると鰹の香りがしなくなる。薄くなる。そこに鰹を足すとまた濁るというのが課題でして、クリアにすると鰹の味が消えてしまう。きれいなのを選ぶならば鰹を入れないほうがきれいです。本日のは鰹が効いているので濁ります。でも、おいしいですからこれ使いますけどね。
固さはこれぐらいの感じですね。ちょうど生クリームの感じ。おいしいのは鰹ですけど、見た目は透明なほうがきれいですから、こっちを使います。上手な料理人は、いかに自分の失敗をカバーするか。これが大事なんです、本当に。カバーをいかにするか。今、じゅんさいがおいしいですからじゅんさいを入れます。

最初に豆乳を飲んでください。豆乳の追い鰹を。最後には柚子を振って。こんなシンプルな料理です。これで一応、完成です。まさに酸を、固めるということで利用しました。川崎先生がおっしゃったようにいろんな酸で固められます。いろんな掛け合わせをすれば料理は無限大になると思います。梅と鰹というのは昔からの日本料理にある。それをもとに繙いていったら、こういった料理が浮かんだんです。ゼラチンは低い温度で舌で溶けます。先にそれが溶けて湯葉のような包まれたものがゆっくり溶けていくんで、最初にちょっと、これ水臭いなと思いながら、だんだん口の中でバランスがとれていくという料理です。食べる時には、ちょっとずつ混ぜて召し上がってください。食材は豆乳とレモンとチーズと3つ。最初に豆乳を飲んでいただいてから食べてください。
それと酸の効用ということで、目には出てこないんですけども、何かものをちょっと保存したい時に酸、酢酸とか穀物酢とか味のしない酸を入れておくと、日持ちが違う。保存したい時には酸が入っているかどうかわからないぐらいの酸を入れて保存して日持ちを長くすることはあります。そういう目に見えない部分での酸の効用というのもあると思います。それと、どうしても普通の酢酸とかは尖ってますから、丸くするには砂糖の関係もあります。グルタミン酸の効用って大きいと思います。昆布をたくさん炊いて合わせ酢とか作ると、かなり丸みのある合わせ酢ができるなと、いつも思います。


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