Program 2:料理デモンストレーション+試食 [だし代表]
講師紹介
「すうどん」

先程からお話を聞かせていただきまして、皆さん、本当にうどんが好きなんだなと感じています。私も食べるのが大好きでなんですが、うどんが好きで好きでたまらなくて、うどん屋をやっているわけではございません。道頓堀で商売して約200年くらいになるんですが、私の祖父は楽器屋でした。第二次世界大戦で全部焼けてしまって「何かして食べていかないといけない」ということで「うどん屋をしよう」というのが今井の始まりです。祖母が、造り酒屋の娘で、結構おいしいものを食べて育った。その祖母がどこに習いにいくでもなく、自分が今まで食べてきた料理、つくってきた料理をベースに、ああでもないこうでもないとつくりだしたのが、この「おだし」でございます。
ということで、科学的に分析したわけでもなく、私に至っては祖母がつくった味をひたすら守っている状況です。今日は、だしをどんなふうにしてとっているか、皆さんに実際に見ていただきながら、何か皆さん方と違うところがあるとすれば「何でそんなことをするねん」と聞いていただくなり、そんなことで進めさせていただきたいと思います。
昆布は、道南の真昆布です。祖母が見つけてきた昆布は、黒口浜の古武井という浜の昆布でした。昆布にも雑という、ちゃんと広げてないものがあるそうですが、毎年、浜の昆布を取り寄せて、どの昆布がうちのだしに合うかサンプリングしています。今日使っていますのは、尻岸内という浜の昆布です。
我々はうどん屋ですので、昆布だしを売るわけではありません。うちの場合、サバ節、ウルメ節を入れた時、サバとウルメと昆布のバランスが一番よくなる昆布が、うどん屋にとってのいい昆布なんです。昆布だしだけで飲んでおいしくても、節を入れて仕上げた時に昆布が勝ってしまってはおいしいとはいえません。また、昆布が頼りなくて、サバ、ウルメに負けるようなのも困ります。毎年、いろんな昆布を選んでいます。古武井の昆布も実際、昆布だしを出して飲んでみると頼りないですよ。昆布の味も、あまりしないし、香りもしない、頼りなく感じるんです。そこにサバとウルメを入れて仕上げると、ものすごくバランスがよくなる。どういう理由で味のない昆布だしがサバとウルメをあわせると、こんなにおいしくなるのか、そこまで究めようとも思わず、おいしからとやってきました。後ほど、昆布屋さんから「それはこういうことなんですよ」と教えていただければありがたいかなと思っています。昆布の包みの紐の色で等級がわかるのも、今日初めて知りました次第です。
うちは水昆布はとらず、だしを炊く時に水の状態から昆布を入れて30分くらいかけ沸騰させます。ある程度沸騰してきたら、ちょっと火を弱め、ポコポコするような状態で、そこからまた20分炊いて完全にできた状態までして昆布を引き上げます。使っている昆布はこれです。黒口浜の昆布です。会場内に回しますので、見ていただくなり、ちぎって味見してもらうなりしてください。



この釜がうちの店でいつもだしを炊く時に使っているもので「八升釜」と呼んでいます。満タンにして八升入りますが、七升五合で使っています。もっとたくさんのだしを炊いた方が楽ではないかと、八升釜の代わりにステンレスの寸胴で炊いたことがあったんです。すると、鋳物とステンレスでは仕上がりがこんなに変わるもんだなと自分でわかったというより、お客さんから教えられました。「お前とこのだし、最近、辛なったぞ」といわれ、同じものを使うて炊いてるのに辛なるわけないやろと思いつつ飲んでみたら辛くなっていた。ダシを炊く釜の材質も微妙に仕上がりの味に関係するんだなと、その時、教えられまして。それ以来、この釜はいくつも並べ、昆布だしは鋳物の料亭鍋を並べて横で炊きながら仕上げております。昆布だしは炊き上がるのに相当時間がかかりますので、釜一杯分七升五合の昆布だしを炊いてまいりました。これがサバ節とウルメ節です。これも回します。
うちは鰹屋さんから削ったサバ、ウルメを2対1の割合で計ってもってきてもらいます。これをここに入れます。サバとウルメを昆布だしに入れまして約1分くらいクラクラさせないようにして炊きます。炊きましたら、だしをここへ移しまして、これを完全に絞り切ります(専用の絞り道具を使用)。店のは、もうちょっと台が低いのでやりやすいのですが。これくらい完全に絞ります。絞れましたら、もう一度この釜に絞っただしを戻しまして、ここに薄口醤油、味醂、塩、グラニュー糖を入れます。濃いだしにお湯を足して。店でやる時はここに目安になる木がありまして、それをあててそこの部分までお湯を足して沸騰させて終わりという段取りです。この釜一杯で35、6人分の量がとれます。沸騰しましたら表面の灰汁を掬って出来上がりです。
最近、だしを守るにあたって困るのは、天然ものの道南産の昆布が安定して入ってこなくなっていることです。これからどうしていけばいいかと思っております。根の昆布と養殖とか促成の昆布を実際にだしを炊いて比べてみると、味が違いますので、そのへんは昆布屋さんにも漁師の方々もいろいろ研究していただき、天然に負けない養殖なり促成の昆布が早くできることを待ち望んでいる次第です。
もうまもなく炊きあがります、そのだしで皆さま方に大阪うどんを食べていただきます。私が今井の店に入った頃は、毎朝5時くらいから1日分のうどんを全部湯がき玉取してドーンと積んで、出すだけだったのです。それが、ある時、木田さんのようなうどんフェチの方が、モチモチした食感のうどんをつくられまして実際に食べてみると食感もいいし、だしのノリもいい。それまで、讃岐うどんが大阪に入っていた頃は、だしとの相性からいいますと全くバラバラになっているような感じで「大阪うどんと讃岐うどんは別のもの。大阪うどんは煮物だったら、讃岐うどんは造り」という感覚でタカをくくっていたんです。その中間をいくモチモチするおいしいうどん、冷凍うどんを食べた時に「これはおいしいやないか、研究しないといかん」ということで、うちも朝、全部湯がいていたのを止めました。毎回湯がきながら、お客さんが来てからでは時間がかかってお客さんが怒って帰りはりますので、ある程度、湯がき置きはするんですが、朝、全部湯がいて、伸びきったコシのないうどんを出すことはよくないと、止めたのです。食感はコシ、のどごしを楽しんでいただくように、だしと相性のいい麺を見つける。木田さんの場合は、まず麺があって、そこからだしを探した。うちの場合は、だしに合ううどん、それでいて伸びないうどんはどうか、ということでやってきた。違う方向からきているんやなと、先日も食学会のイベントで木田さんとお話して、そういうことだったのかと知らされた次第です。さあ、できました、どうぞ食べてみてください。


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