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「料理と飲み物の相性 Part2」Program 1:プレゼンテーション+試飲食 [フランス料理]

「料理と飲み物の相性 Part2」Program 1:プレゼンテーション+試飲食 [フランス料理]

Program 1:プレゼンテーション+試飲食 [フランス料理]

講師紹介

山口 浩(やまぐち ひろし)氏
「神戸北野ホテル」総支配人・総料理長、
関西食文化研究会コアメンバー
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「鱸のロティと煮溶けたエシャロット 赤ワインソース 帆立貝柱のクロカン添え」

ピノ・ノワールにあえて魚料理を合わせるのですが、ソースには別の赤ワインを煮詰め、エシャロットを鵞鳥の脂で炒めたりパウダーにしたり“つなぎ”として効果的に使うなど、香りの組み合わせで見事なペアリングを披露。帆立貝柱を粉砕し伸ばしたクロカンが新しい料理のシンボルにもなっていました。

いつもは、ワインのことを考えて料理していません。ソムリエが料理に合うワインを選んでくれるからです。プレゼンする鱸のロティ。この料理はベルナール・ロワゾーという僕の師匠が始めた料理です。フランスの中でも有名な料理だと思います。通常は鱸ではなく、サンドルという川魚を使います。今日はワインと寄り添うような形にしたいので、帆立て貝柱のクロカンを付け加えてオリジナルな部分をプラスしています。今から30年近く前の料理です。当時、魚に赤ワインを合わすことはほぼなかった。今はそんなに珍しいことではないかもしれませんし、魚料理に赤ワインを合わせるソムリエもいると思います。それだけ当時の魚と赤ワインの組み合わせは相当に斬新だったと思われます。

今日はピノ・ノワールを召し上がっていただきますが、ブルゴーニュのワインだと料理に使うには色が薄すぎるんですね。ブルゴーニュより南にいくほど太陽の光が強いので、ブドウは自分を守るために皮を厚くして、日焼けと同じように色が濃くなっています。料理にはそうしたブドウのワインを使い、その色素を飛ばさないように料理していきます。ワインの中にエシャロットのみじん切りを加えて煮詰めていきます。フランス料理では、煮詰めていく作業の中で肝心なのは沸騰させない、ミジョテの状態、コトコトゆっくり、赤ワインを煮詰めることに関してはそういう注意が必要です。沸騰させますと泡が立ち、弾ける時に色素が外に飛んでしまいます。ゆっくり煮詰めたものと早く煮詰めたものとでは、出来上がりのソースの色が違うものになっていきます。ゆっくり、ゆっくり。通常は、なるべく熱伝導が均等になるように、銅鍋でヒートトップという鉄板のレンジに置いて火を入れる。鍋ですと温度が高くなると外側に色素が付着して必要な色が抜けていくので、弱火で注意して煮詰めます。

皆さんにおつぎするワインと比べても、ブドウの色素の出方が全然違います。色が濃い。煮詰まったものがこれです。このくらいまで煮詰めます。フランス料理のソースが日本料理と違うのは、水分の中に成分が混ざっている。フランス料理は水分でなくなった状態でソースが出来上がるイメージですね。白でも赤でもワインソースを使う時、700ミリくらいギリギリまで、昔だとそこに生クリームとか入れて元に戻すのですが、限度が700ミリ。500とか400の方がおいしいものが出来るんですが、原価が高い。いかにうまく詰めてギリギリまで伸ばすかが料理人の腕かもしれません。ギリギリまで煮詰めたものは色も濃い。色素が飛んでいません。これを漉します。久しぶりやね、こういうソース作るの。エシャロットはなるべく細かく切った方がいいと思います。エシャロットにソースに加える、この中には苦味があるんですが、ソースの厚みを出すのに不可欠なんです。液体を煮詰める時に固形分が鍋の中に入ってないとギリギリまで煮詰められない。煮詰める時は、固形部分が重要です。これが煮詰めたものです。ミーザンプラス(下準備)として用意しておきます。

次にエシャロットのフォンデュを作ります。グレスドワ、鵞鳥の脂ですね。これを使うのは融点が低いので、素材にあたる熱がゆるやかです。じっくり時間をかけながらエシャロットをフォンデュで煮溶かすように煮詰めていきます。加熱します。この時、フランス料理の場合は塩で火を入れるといいますが、ほんの少し塩を入れていくと塩のもつ脱水効果でエシャロットが早く炒めやすくなります。これもゆっくりゆっくり火を入れていきます。エシャロットでもっている糖分が熱によって化学反応を起こします。120℃を超えた時点から加速度的に反応が起こるので、120℃を目安に温度調整していくのが技術といわれる部分。なるべく短時間で効率的にソースを仕上げていく時には反応温度を知ることが大切になってきます。どんどん炒めていきますと、きつね色になります。低温で炒めていく。このくらいまでしっかり。これはタマネギではありませんので甘くて苦いです。子供なら泣くくらい苦味を強調している。この料理のソースの部分は、これだけ煮詰めているので香りは無視してます。グレスドワの脂はこれだけ入っているので、脂を切っておきます。これで付け合わせ兼ソース、エシャロットフォンデュが出来上がりです。

今回、料理の中でワインがもっている役割は何かを考えてみました。フランス料理にはいろんな地方料理がありますが、一つの鍋で作るごった煮です。時間をかけて加熱調理していくと、そのなかで失われていくものがある。香りは揮発性なのでどんどん抜けていくんですね。味を追求していけば、食卓の上でもう一度香りの世界を楽しみながら食事をした方が食の世界は広がる。そうしてワインとの組み合わせ、マリアージュが発展してきたのがフランス料理なのかなと思いました。新しい料理ではハーブとか香りを直接料理の中に使うこともありますが、近年になってからです。それまでのフランス料理は煮込んで煮詰めてしまうものだと思います。今日は組み合わせを楽しんでいただきますが、料理を食べて味わっていただく味わいの中に香りの部分があって、ワインを口にした時に出てくる香りが料理とワインのマリアージュ、相性だと思います。

次、帆立て貝柱のピューレとエシャロットのピューレをクッキングシートに薄く伸ばして乾燥させて板状にします。帆立て貝柱はロボクープにかけてすり身状にしたもの。エシャロットは水に養分がとられないので真空パックにして、植物繊維は90℃以上でないと柔らかくならないので、90℃を超える加熱をして繊維を柔らかくしてピューレ状にしたもの。これがエシャロット。帆立て貝柱はもう少し透明になります。エシャロットの薄く伸ばしたものをミキサーにかけてパウダー状にします。淡い色になっています。それを炒ります。2,3分で茶色になります。苦味がある。メイラード反応が起こって香ばしい香りが出ています。これを帆立て貝柱を引き延ばしたものの上に振って、乾燥させたのがクロカンです。帆立て貝柱の甘い香りと味とエシャロットの苦味があるシートです。料理につけていますので召し上がっていただき感想を聞かせてください。

鱸は、身がしっかり厚いので両面塩コショウし、皮に強力粉を軽くまぶします。オイルはグレスドワ。鍋にあたった熱を、魚を媒体として伝えていくわけですが、グレスドワの方が熱の伝わり方がやわらかいです。クッションの意味でバターを加えます。バターの中の水分がさらにやわらかい熱を魚に加えてくれます。蓋をして、ポアレしているけど、鍋には直接的な熱があたっていてバターから出る水分で蒸し焼きのような状態で焼き上げていきます。これが煮詰めたもので、色がそんなに飛んでいっていない。しっかり色素が凝縮されて煮詰まっています。煮詰めた赤ワインにニンジンのピューレ、湯がいてミキサーにかけてピューレ状にしたもの。ここにバターをモンテします。この状態で赤ワインソースが出来上がりました。塩コショウで調味します。ヴァン・ルージュです。バターを入れて温度を落としています。この状態で魚もほぼ焼き上がりまして、盛りつけに移ります。エシャロットは水で濃度調整します。お皿に赤ワインソース。エシャロットのフォンデュをお皿の中央に。鱸、皮目をパリパリに焼いていますが、身は蒸したようなほんわりした状態。帆立て貝柱のエシャロットの苦味を強調したものを上に乗せて、今日の料理とさせていただきます。

●試食タイムにワインとの相性についての狙いを説明

赤ワインの酸味とエシャロットのもっている甘味と苦味、それといっしょに魚を合わせた時のふくよかさを感じていただきたい。ワイン単独での味わいと、料理と合わしたときの印象がどう変わるか。前回、川崎先生の示された相性の分類提案で“ニュー”という、ワインと料理が出合ったことで生まれてくる初めての味を、より一層感じていただきたくてこの料理を考えています。関西食文化研究会で科学的なこと、料理の組み立て方を拝見するうち、酸味や苦味とか、五味の中で分類されるものは体の中に取り込む時に分析して自分の体にとって安全なのか、危険性がないかを察知するのではないかと。そういう最初に感じた味覚の次に来る、コク、味覚、マリアージュ、これが本来の食の喜びで、総合的にこのものを食べてもいいんだと体が感じた後に感じる味覚が本来の相性かなと想像して作ってみました。

●お断り

山口さんは料理プレゼンで、グレスドワ(鵞鳥の脂)を使っていますが、現在はグレスドワ(鵞鳥の脂)が入手困難なために、当日の試食用の料理と配布したレシピではグレスドキャナー(鴨の脂)になっています。 よろしくお願いいたします。

「鱸のロティと煮溶けたエシャロット 赤ワインソース 帆立貝柱のクロカン添え」

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