Program 1:プレゼンテーション+試飲食 [イタリア料理]
講師紹介
関西食文化研究会コアメンバー
「羊乳に漬け込んだ 仔羊のじっくりロースト トリュフ風味」

仔羊の背肉、羊乳とタイムを真空パックにして2日間ほどの下準備。これで羊肉特有の匂いもとれるそうですが、再び仔羊の脂で包み、脂を落としながら焼くじっくりロースト。このときの焼き汁スーゴで作るソースとともに、結果としてミルキーな風味が生まれくることに。
今日はワインとの相性を考えた料理です。仔羊のおいしいのは、生後時間がたっていないラム、ミルクを飲んでいるのでミルクの香りがしておいしい。それを再現するのもいいなと考えました。まず、仔羊の背肉キャレの骨を外し、脂をそぎ落として薄くします。間にかぶっている肉は外してソースにします。軟骨も外します。結構薄くなるまで叩きます。この状態でマリネします。真空パックに、少し生クリームを入れます。羊のミルクが北海道で市販されています。さらにタイムの葉を香りづけ用に入れ、仔羊の肉を真空パックします。羊は脂があるとちょっと臭い。漬け込んで3日。その間に仔羊の肉に羊乳がしみ込んで脂の臭みはミルクと生クリームに出てくれ、やさしい感じの味になります。それを、軽く塩コショウして脂で周りを包むようにして紐で縛ります。脂の分厚いところに切り身を入れ、脂を再度カバーして叩いたもので覆い、筒状に成形します。柔らかくジューシーに焼くため、脂を肉にしみ込ませたいため、できるだけ脂で包む。切れ目を入れるのは後の方がいいんですが、紐がかかるので最初に入れ、後は形を整えて、これを焼きます。その間にズッキーニを潰し、水分を飛ばすように味を凝縮させ、汁がなくなるまでひたすら炒めます。
仔羊の肉は、背の方がついている部分をさっと焼きます。先に外した後の筋やくず肉も使い、軽く炒めてダシをとります。ベースはブイヨン、ミルポワを使って羊の汁スーゴを作ります。少し炒めて褐色になったのではなく、煮込んでいるうちにだんだんメイラード反応が進むということですね。脂が多いので取ります。焼き色をつけているよりは脂を落としています。炭で焼く時も脂を落とします。理想的には脂が少し残った感じ、肉にしみ込んでいくような、しみ込ませるようなイメージです。両サイド焼いたからといってリソレのつもりではないです。あくまで脂落とし。リソレの考え方が一般的になって、焼き色を付けることがうま味を閉じ込めると言われますが、それには、はなはだ疑問があります。リソレやアロゼは理屈に適っていますが、最近、メイラード反応を考えたら、肉汁をかけながら脂をかけながら周りにうま味を作っていくのではないかとも思えるのです。壁によって肉汁を漏れないようにして、おいしさを保つのとは違うような気がしています。



脂が落ちたら、塩コショウして網付きバットに乗せ、スチコンに入れます。温度150℃、スチーム10%。肉は3分くらいたったら外に取り出す。5分休ませ、またスチコンに入れるのを4、5回繰り返します。休ませながら余熱でじわじわと火が入って、さらに火を入れることでじっくり柔らかく火が入る。羊は火入れが浅いとおいしくないので、しっかり入れます。
スーゴの方は、鍋に入れオリーブオイルにタイムとニンニクで香り出しします。多少色がつくくらい。ブロードで香り止めします。煮詰めます。トリュフソースは、ニンニクをほんの少し使ってアンチョビを少し使ってそこにトリュフを潰して入れたものです。ニンニクを油でこぼすように柔らかくしてニンニクの中にいわゆるアイオリソース、卵を入れるベースのようなものですね。ニンニクとタイムは香りが出たら取り出します。あくまでも淡い香りでいきたい。今日はオーストラリアの羊ですが、北海道のサフォークと違ってどっちかというとヨーロッパの仔羊に近い感じ。それほど羊の癖が強いわけではない。汁が詰まったら羊乳を加えます。濃度が出るくらいまで詰めます。ほんの少しだけ牛乳を混ぜます。ミルクですから分離しやすいところがあるのでね。オリーブオイルはつなぐという意識はなくて、上に浮いていてもいいです。トリュフはフレッシュがあれば上から散らしてもいいし。オリーブオイルをもう少しかけたくなるね。こういうところです。
仔羊は古典的にいうと、骨付きで焼いてレモンを絞って食べたり、料理を始めた頃は焼いて酢をかけていました。ワインビネガーを飛ばしたり、褐色のソースも煮詰めて酸味を残したソースが多かったんですね。仔羊のおいしさは収斂したり、凝縮するおいしさではなく、緩めるようなおいしさではないかなと思ったのです。今回は、ミルクの煮詰め具合もそうだし、メイラード反応の凝縮感もあまり出さないで、仔羊のもっているミルキーさを強調して、トリュフとあわせたのも収斂するのではなく、拡散する方のおいしさ、ふわっと広げる感じ。じつは、血のしたたるようなステーキに醤油を使った凝縮感のある濃いフォンを使ったソースに白トリュフをかけてもおいしくない。そういうものではなく、焼き色がカキンとついているのではなく、全体的にとらえどころのないような、もやっとした感じになります。ズッキーニもそうですが、イタリアンの感じなのか、仔羊の肉の味があまりギュッとしないんですね。緩いところでわざと抑えている感じがするのがイタリアンの良さかな。いろんな要素を入れていくと増やすことは可能ですが、ワインとの相性ということで、なぜこれを合わせたか、緩めることとミルキーさ、その中に含まれている仔羊の香り、うま味、やや臭み、そうしたものがうまく合ってくれるのではないかと思いました。ご質問がなければ終わりとさせていただきます。
●試食タイムにワインとの相性についての狙いを説明
こちらも、狙ったのは前回の「相性」で提示された分類案の“ニュー”。味の共通点、香りの共通点で括るのではなく、およそ違う要素のワインと料理が合わさることで予期しなかったおいしさに結びつかないかなと考えたのです。結果的には山口さんの料理にも同じことを感じましたが、ワインを飲む時の酸味、若干のタンニンとか苦味とか、ばらばらの要素が料理といっしょになることでまとまって、ネガティブさが消えて、まろやかにまとまる。また、さらに良くなって、タンニンがやさしくなって甘く感じたりするのは油脂の力かもしれません。そういうことも感じました。


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