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「料理と温度の関係 Part2」Program 1:基調講演  2/2

「料理と温度の関係 Part2」Program 1:基調講演 2/2

Program 1:「料理人のための<料理と温度>のサイエンスとデザイン part2」 2/2

講師紹介

川崎 寛也氏
農学博士

加熱器具について、ざっとみておきます。

●フライパンではいろんなことが起こっています。伝導熱で鍋が温まって肉を加熱して、肉汁が出てそれが鍋と肉の間で対流熱になってまた肉を温める。伝導熱でさらに肉の表面を焼く。フランス料理では肉の表面を一回焼いて取り出した後、温かいところにおいておく。この肉を休ませる「ルポゼ」は、中に温度を伝えることをしている。そのままフライパンにおいておくと、どんどん火が入っていきますが、「ルポゼ」によって外は焼けて中にゆっくり温度を伝えていけるのです。

●オーブンは、ファンがついているか、ガスか電気でも違います。メーカーによっても違う。ファンの強さ、温度計の数によっても違う。庫内の大きさによっても違う。というようなオーブンの特性を理解していただきたい。

●茹でる、揚げるのは、対流熱です。温度と加熱媒体で調理が違ってきます<参照:表5>。

表5:茹でる、揚げる-対流熱-

●炭火は、遠赤外線の輻射熱です。表面温度が800~1200℃と高い。遠赤外線では表面に焼き色が早くついて乾燥する。内部は表面からの熱伝導でゆっくり熱が伝わって水分が保たれてしっとりする。これが炭火での加熱のいいところです。

●蒸すの特徴。蒸気を使って100℃で加熱する「蒸す」という調理はアジアにしかなかったんです<参照:表6>。近年になって「ヴァプール」といって、蒸気をヨーロッパでも使うようになっています。

表6:「蒸す」の特徴

●石窯で焼くとおいしい理由。京都の『祇園さゝ木』さんにも置かれていますが、独特の火の入り方で日本料理にとっての炭火に近い。熱容量といって、熱を留めておく能力が大きく、放射率が高い。同じ温度でも多くの遠赤外線が出るから表面がパリッと焼ける。

これで大体のイメージがつくと思います。表3の図にはない部分もあって、できないこともあるということです。しかし、そういう部分はできないのでしょうか。横軸と縦軸の組み合わせで考えてみたら、できることが見つかるかもしれない<参照:表7>。温度と調理技術。その原理を使えば、低温で遠くに熱源をおいてゆっくり温度を上げていくこともできるかもしれない。低温で炒める。ぬるい温度で火を入れるのがコンフィとか茹でて煮込むしかできなかったのが鉄板で焼いたらどうなるか。やってみてください。ごく低温だとアイスフライとかアイス炒めとかも考えられるかなと思ったりします。

表7:温度と調理技術(ざっくり)

では、新しい料理を考える考え方はどこにあるか。加熱調理法を他の素材でやってみるというのも、そのひとつ。表をつくって、抜けているところを埋めていくと新しいものができるのではないか<参照:表8>。赤字が「ないかな?」と思っているところです。肉類を水蒸気で加熱するとか。卵の空気加熱はないなとか。酵母で魚を熟成させるとか。ほとんど発明されていますが、まだ抜けているところもあるかなと考えていただきたい。

表8:加熱調理法を他の素材でやってみる

■新しい料理に向けて

以上で、何のための温度のデザインかはご理解いただけたと思います。調理の温度は、温度によって食材の状態を変えるためですね。成分や構造を保つため、温度を感じさせるため。そして何かを表現するためにデザインする。何を表現するかが重要です。

最後に、「新しい料理を考えたけれど、なんかしっくりいかないな」という時にどういう切り口で考えればいいかを提案しておきます。どこを変えれば新しい料理ができるか。調理技術の段階で考えてみるものです<参照:表9>。料理の技術を流れで考えると、学ぶべき「伝統技術」は「食文化」「店の味」「修業先」などによってできて、保存されています。伝統技術の先にあるのが「コア技術」で、料理として成立させているもの。例えば、寿司だったらご飯が味付けされていたり、上に魚が乗っているというかたち。海外の人でも、それである程度「寿司」といえるものを作れる。さらに、それをおいしくするための「品質に影響する技術」。そして、作業性や効率を高める「作業性に影響する技術」もある。そこで、どこをいじるか。料理が変わり「これは俺のオリジナルや」というのができれば、いいかなと。この二つを切り分けて「自分はどっちをやっているか」を意識しながら考えてみてください。この先に乗っているのが「アレンジの技術」。自分の好みが乗っていればいいものができるはずですが、単に思いつきとか、好みだけで何となくでは、創作料理みたいなものになるのではないかと思われます。みなさんが新しいメニューを考えることは新しい技術を考えていることにもなっていて、こういうことを意識しながら考えていただきたい。また、ご意見も取り入れてブラッシュアップしていきたいと思っています。

表9:調理技術の段階

もうひとつ、既存の料理からどのように新しい料理を考えるか、クリエイティビティの段階にもふれておきます。「調理法」を他の食材で試すとか「ジャンル」を超えてもOKなことを最初に行うことが多いと思います。その次が「調理法そのものを変える」。温度や時間を変えることです。状態が変わるのでハイレベルになる。そして、最終的に「素材に向き合う」。何を表現したいか、何を活かしたいかを考えないと「コア技術」とか「品質に影響する技術」の発明はできないと思います。今、自分がやっているレベルはどこか。「ここや」という言い方ができるような流れを明示できる表の完成を目指したいと思っています。以上、温度の原理、原則から考え方について、でした。

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