Program 2:温度をテーマにした料理実演+試食 [日本料理]
講師紹介
「炭火焼の効果を狙った焼き物2種 アマダイの塩焼き・サワラの柚庵焼き」
「熱源を変えた昆布水(だし)の飲み比べ」

テーマは「炭火焼と温度」です。炭火焼の原理を解明して、炭火を使わずに炭火焼に近づけようという試みに取り組んでいますが、炭火に代わるものもあるのではないかとマクロで考えて今回のテーマとしました。もう一つの「温度」は、熱源だけを変えた昆布だしの飲み比べをしてみたいと思います。
「炭火で焼くとおいしい」というのが共通認識ではないかと思います。炭火は、他の加熱機器に比べて遠赤外線の放射される量が多い。熱量も多い。炭火は800~1200℃の火力がありますが、グリルでも850℃、ガス器具は600~400℃が限界。この熱量の差は大きい。それに炭火と香気成分の関係があります。香気成分は加熱される温度が高ければ高いほど好ましい香りとされるものがとれるので、炭火で焼く方が香りがいい。なおかつ、糖とアミノ酸の温度差、種類差も関係してくることもわかってきた。例えば、味噌漬けをした魚を焼く時の香り、つまりメイラード反応も温度帯によって違う香りになってくる。加熱温度にしても100℃で焼くより180℃で焼いた方が好ましいと感じるプラスの数字が多い。こういうことから、炭火の利点がよくわかってくると、やはり「おいしい」と結論づけられるのではないかと思います。
今、ここで使っている新しいガス調理器具は、私と『一子相伝なかむら』の中村元計さん、『直心房さいき』の才木充さんがアドバイザーとして参加し、大阪ガスさん(以下敬称略)と共同開発しているものです。実際に焼いているのは、アマダイの塩焼きとサワラの柚庵焼きで、皆さんに召し上がってもらい、炭火焼きにどこまで近づけられているかを確かめてもらいます。
■開発中のガス調理器具
構造はブラスト燃焼という強制吸気を使った方式を採用しています。燃焼用の空気を電気で動かすファンで強制的に吸気して、燃焼効率を上げて強制的にガスを送り出したもので温度を上げていく。バーナーの上に鉄板を置いて、それを加熱することで850℃まで温度を上げられ、輻射熱、遠赤外線が出て魚が焼けていく仕組みです。従来のガスだと上限が450~600℃だったのが倍くらいの温度になってきています。



プロトタイプを大阪ガスにつくってもらっていますが、現在ものはサイズがまだ小さい。空気を送るスペースがいるので焼所が狭くなるのです。器具のサイズは、調理の作業性にかかわってきます。もともとはガス式の調理器しか置けないところに熱量を上げたものを置けることで焼き物の品質が上がっていく。効率を上げる技術、品質に影響する技術でいえば、同時に作業性+品質を上げる技術として考えられるべき技術ではないかと思います。スペインにあった『エル・ブジ』もそういう考えで、科学的にどのように料理を新しくつくれるか。彼も「作業性」というより「品質」に影響する、おいしくするために食べ手に感動を与えることを重要視されました。作業性効率にかかわるランニングコストの面でも大阪ガスといろいろ検討しています。
召し上がっていただくアマダイ(ぐじ)の塩焼き、サワラの柚庵焼きは、まだまだ炭火には勝てない。なぜかというと、熱源がまっすぐ棒状に入っていますが、ほどよい燻煙のたち香りが少ないのです。ガスは水蒸気を伴う時に水が熱を奪う。蒸発熱が食材のエネルギーを奪ってしまうので表面温度が低い特性がある。それをどう水蒸気を流していくかが一つある。それに、魚の脂が下に落ちた時、熱源に直接落ちると弾くんですね。煙の立ち上がりが弱いけれど、普通のガスのグリラーより少しは炭火のような香りがついていることは事実だと思うわけです。食べていただきながら感想をいただきたいと思います。まあ、そういう課題はいくつかありますが、おいしさと技術革新が大事で、何年か考えていくと今までの課題も解決できていくのではないかと思っています。
■温度と熱源
もう一つのテーマは「温度と熱源」です。水と昆布と熱源によって昆布だしができます。水は同じ井戸水。軟水の硬度50(mg/ℓ)。温度の変化も同じで65℃のキープ。昆布は天白の一等。同じ昆布を左右半分に割って上と下は誤差があるので左半分の昆布は左の鍋に右半分の昆布は右の鍋に入れます。熱量は同じで熱源を変えています。一つはガス、一つはIHです。それで同じだしが引けるか、実際にやってみると違うんです。うま味の出方、色もほぼいっしょですが、スッと喉越しがいいタイプはガスの方なのです。IHの方が少しイガイガする。喉越しが悪い。原因を考えてみました。IHの詳しい仕組みは省きますが、水分子の構造は水素が2つと酸素があって水素が結合する分子になって104の角度で結びついている。水分子は酸素原子が-、水素原子が+の電気的な極性をもっていて、磁場に影響されやすいのが水であると。となると、水分子が電磁波の磁場の影響を受けているのではないか。磁場が影響して昆布の養分を出しやすい状況になっているのか。いいところを引き出し、ピュアな部分をとりたいという作業に対して電磁波が出してほしくない養分まで出しているのではないか。などと、現段階ではそういうことではないかと思いました。
昆布だしの飲み比べ。違いがわかりますか。どっちがいい悪いという話ではなく、加熱ということも熱源が同じでないと同じ状態にならない。加熱=同じ温度帯であることが重要ではなく、他の因果関係も考えてみるべきではないか、ということなのです。水は複雑な要素が多いなと思いました。
今から配る焼き物、アマダイの塩焼きは、まだまだ炭火に追いついていない。糖が少ない。アミノ酸は多いが、メイラード反応が起こりにくい。加熱しても香気成分のおいしい要素が出にくい。サワラの柚庵焼きに関しては、塩焼きよりも好ましい香りが出ている。糖とアミノ酸が効率的に香気成分を発揮している。同じ焼き物で温度が同じでも、塩焼きか柚庵焼きで効果が違ってくると思います。なおかつ、熱源が強くて少し離した状態で焼くと好ましいと思います。「鮎の塩焼きは炭火に限る」といわれますが、鮎の塩焼きも熱量があった方が好ましい香りが出るのです。

(以下、コアメンバーとの応答の一部を抜粋)
山根 鉄板をガスで焼いて空気をたくさん出す。鉄が焼けたもので当てていく考え方ですね。炭にまだ追いついていない原因として、ガスの燃焼によって水分が出てしまう。炭素そのものが燃えるだけでは水分が出ない。それと都市ガスにつけてある匂いがどう反応するか。排気ガスは外へ逃がすのは可能じゃないですか。そうすれば、匂いと水蒸気は問題がないと思うけど、この器具は熱した鉄の燃焼ガスで遮断されているのではないですか。
高橋 ファンを入れて燃やしているだけなので排気ガスの通り道をつくらないといけないですね。一方向にもっていけるようになると水蒸気を伴って逃げていくのでいいのではないかと思っています。
山根 鉄板を焼くのは熱源が何であっても排気ガスを抜いたら変わらないといってもいいのではないか。その隙間から上がる燃焼温度も焼くのに使っているということかな。鉄板の輻射熱だけで焼いているわけではない、下から上がっている熱もある。
高橋 鉄板の熱源に、保温ですね、熱伝導で空気が温まって上がってくるのもある。熱源は普通のガスより高くなっているのです。ただし、香りとかの成分についてはまだ遠いなと。川崎先生はどんな感想ですか。

川崎 塩焼きの問題は香ばしい香りがつきにくい。
高橋 焼き上がりは普通のガスより柔らかく仕上がります。
川崎 新しいガス調理器については、開発されている方が科学的な部分は押さえておられると思いますので、昆布だしの飲み比べについて。今回、試飲した時、温度が違ったので、ほんとに味が違うのかどうかはわかりませんね。温度をバシッとあわさないと味の感じ方は違いますから。メカニズムに関しては、仮説もある、要因もあって、電磁波のことも水分子の問題もあるかもしれないけれど、根拠を求めるのはかなり先になると思います。60℃に温度が上がっているのは、水分子が活発に動いているということですから。まず違いがあるかどうか。違いがあるとすれば雑味が出ているのは成分が出ていることになるのか、雑味を感ずるのはマスキングされてないのか、両方あると思います。可能性として。成分分析すればわかりますから。研究対象としてまず違いがあるかどうか、香り評価をしっかりすること。成分分析を網羅的に解決する方法があるんですね。この場合は網羅的にやった方がいい、ミネラールという装置を使って成分解析すれば、あたりはつくはずです。ということを考えると、かなりデカいテーマです。違いが明らかになってメカニズムが明らかになれば解決策はある。だからメカニズムまで明らかにした方がいいと思いました。
高橋 機器開発にかかわることではなく、仕事の中で当たり前だと思っていても違うこともあると思いますので。温度=加熱ではなく、熱源がどういう作用をしているか、細かい部分までロジカルに考えるようにすれば、おいしいものがさらにできると思います。だから、いろいろと考えていただきたいと思います。本日は、ありがとうございました。


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