Program 1:プレゼンテーション+試食 [イタリア料理]
講師紹介
「バターの中でじっくりと加熱した石黒農園のホロホロ鳥のフリカッセ 菜の花添え」

本日は、基本的に低温調理ですが、これはやり尽くしていて、新しくない。調理温度によって出来具合が違うことは経験的にも知っていますから、いかに適温でコントロールするかに尽きると思います。料理と温度のテーマについては、食べる時に感じる温度も重要です。口に入れた時、同じ食材でも熱い、ぬるい、冷たいなどで感じ方が変わります。そういうことをうまく組み合わせるのも面白いと思いました。
ホロホロ鳥の胸肉を捌き、軽く塩コショウして、このままの厚みでいきます。それにトリュフ。皮の堅いところを削って使います。真空調理用に袋に入れます。この時、手を消毒すること。なぜか。低温で調理することは微妙な温度での加熱ですから、手についているバイ菌が袋の中で培養することになって非常に危険です。注意しましょう。
これはバターを溶かしたもの。油脂を全体につける感じにして真空にします。バターをたっぷり溶かして入れる理由は、加熱しながらバターを肉の中に沁みこませたいからです。真空調理で圧をかけた時、バターがクッションになって細胞に真空の影響が出ないようにしたい。真空調理した食感はハンペンや蒲鉾みたいな感じになりやすいので、それは避けたい。真空にする時の圧を直接的に肉にあてないようにする。ただし、水分をたくさん加えると液体の中で加熱することになるので、多少はだしのようなものが出てしまう。肉はオイルの中だと固くなりにくい特性があります。これを、65℃に保ったエキストラバージンオイルに浸けます。混ぜて温度を一定にしながら芯温を53℃になるようにゆっくり加熱していきます。これが、ほぼすべてです。悩んだんですね、真空パックにしてからスチームコンベクションの中に入れて同じ温度帯にもっていくのと、サーキュレーションしたお湯の中で加熱するのと、オイルの中で加熱するのと、媒介するものが空気か、水か、油かによってどのような差が出るか、わからなかった。経験的にはオイルで加熱した方が柔らかくなるのです。
ソースをつくっていきます。オリーブオイルを入れたソースパンでマッシュルーム、エシャロットを15分くらい加熱していきます。香りを出す程度にソテーします。バターで仕上げていく、ここが難しいですね。オイルをたくさん入れると香りが早く出る。香りが出たら白ワインとベルモットを入れます。火が入ってワインを煮詰めていき、ほぼ煮詰まったらブロード、鶏のブロードです。詰まりすぎると昆布水を入れる。うちでは1ℓの水に昆布を15gくらい入れて一晩おいて漉したものを使っています。弱火で10分ほど煮たら漉します。ブロードでマッシュルームとエシャロットの香りとうま味を煮出して、ベルモットと白ワインも入りました。これにホロホロ鳥のブロードを加えます。ホロホロ鳥の骨をブロードの中に入れてとったブロードです。ちょっと煮詰めます。
菜の花のピュレをつくります。まず菜の花をエチュベしていきます。オリーブオイルはモンテリブレイのD.0.P.です。シチリア産の辛味が強いもの。リンゴみたいなフルーティな香りがします。昆布水を少々加えます。蓋をして火にかけます。菜の花、色がきれいです。昆布水でエチュベすると、より色がきれいになるのは気のせいですかね。水分を飛ばします。ここに柚子の汁。柚子も菜の花もグルタミン酸が多く含まれているようで、だしを感じさせる味になります。うま味が結構あります。おいしいです。盛りつけ用にします。



ソースをフライパンで仕上げていきます。真空調理で加熱したホロホロ鳥の肉は、皮をつけたままやった方がいいかもしれませんが、剥く間に冷めるので皮を剥きます。ただし皮と身の間についている脂を残したい。しつこくなくて、おいしい。これを温めます。ソースをつくっていきますが、ここに白ネギのピュレを入れて生クリームを入れます。ホロホロ鳥を温めたバターが溶けているのでモンテみたいにするには冷たいバターを入れた方が仕上がりやすい。分離しやすい。その中に鳥を戻します。このへんは古典的です。いくら低温調理といっても、ぬるいだけだとおいしくないので熱く見せることも重要だと思います。どれだけ鳥に火を入れても大丈夫かというのも経験で、意外に大丈夫です。中まで火がドンドン入っていくことはない。お皿を用意してください。ではカットします。ささ身はおいしいですが、繊維が直角になるようにカットします。ソースに柚子を少しだけかけて柚子の香りをつけます。温めます。このままもっていきます。菜の花にソースをたっぷりかけます。菜の花を適当に添えます。トリュフをかけると、とってもおいしいです。はい、でき上がりです。
オイルの中でゆっくり加熱するのをいろんな食材で試しました。初めはオイルの中に直接漬けていた。オイルを60℃くらいにして材料を入れて加熱していました。最初はフグで試してみました。フグの身は100℃でしっかり火を入れると締まりやすいのでカチカチになる。そうならずに、ふわっと柔らかくて緻密な肉質を味わう方法があるのではないかと思い、オイルで加熱してみたのです。最近はパックにするようになって、考え方を変えたら真空調理が使えるかなと思います。ただ、真空パックにすると水分は蒸発しない。それによってローストした時のような凝縮感が出せない。水っぽい感じになるという欠点がある。焼いて縮むのもマイナスですから、どういう状態にしたいかによって調理は変わってくると思います。オイルの中でゆっくり加熱する利点は水分を伴わないので味が外に出にくい。香りは結構出ます。香り成分はオイルに抽出され、うま味成分は水分に抽出されるので水を加えて加熱すると水溶性のものは水の方に抽出される。オイルでやると食材中のうま味が外に出にくい。ある程度、高温になると離水しますが、低い温度帯では油温は、うま味を逃がさない点では有効だと思います。水に比べて、あたりが柔らかい感じがする。水の温度、量、オイルの温度と量、時間によって変わってきますが、ゆっくり温めていくことが大事です。この調理、白身の食材は向いていました。香りに特徴がある食材、むれ臭が出やすい食材には向きません。小羊でやると結構気持ち悪いです。鹿もローストした方がよい。フグは肉質を壊さずにおいしい。オイルでフグを熱して白子とかダシをうまく使ってソースをつくる。菜の花といっしょにあわせる。バターを入れるとオイルの中で水分が多く、他の成分もたくさん入っているのでクリーミーで、中にうまく浸透させた時おいしさが増す。ただバターと相性のよくない食材もある。フグはバターオイルで加熱した時、食感として肉質はいいが、バターを使いたくない料理の場合はオイルの温度を上げてその中で直接、加熱していました。
質問 仕上げの温度はどれくらいですか。
植村 仕上げた時にあまり変えないつもりで54~55℃とか。それほど上げないつもりでやっています。表面温度と中心温度は違うので、お客さんに出す時はファーストアタックで「熱い」と思わせたい。皿を温めておき、ソースとか上に小切りの野菜とか付け合わせのものをアツアツにしていっぱい散らすので、一瞬、熱いものと思う。


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