Program 1:プレゼンテーション+試食 [日本料理] 1/2
講師紹介
「メークインの天ぷら(三通り<薄力粉・米粉・米粉+車麩>の揚げ方で)」

田中 今回、「天ぷら」を見つめ直すというか、考え直してみました。いろんな食材と衣や油を替えて実験してみたんです。試した結果の中で一番わかりやすいのがメークインでした。小麦粉は普通の天ぷらで揚げたてがおいしい。けれど、冷めると衣がベシャッとくっつく。グルテンがあるので、どうしてもベシャッとなる。そこで、グルテンがない米粉を使って揚げてみました。食べ比べてみたら、米粉だけですとうま味が出ない。それはなぜかと考えた時、グルテンがある程度必要かなと思えたのです。そうした実験について発表します。
川崎 こちらからも説明いたします。そもそも「天ぷら」は、卵と水と小麦粉で衣をつくりますが、重要な技術としてグルテンを出さないように温度を下げたり、かき混ぜないとかがあります。それで、「そんなにグルテンが気になるのなら、グルテンのない打ち粉を使ったらどうですか」と提案したのです。
田中 初めて粉を変えて揚げてみました。米粉は確かにカリカリにはなるんです。けれど、天ぷらは衣と素材のバランスが必要で、米粉だとうま味が出ないのと、天ぷらとしての食感が違うかなと思いました。

川崎 では、もう一度見直して「この際、いろんな粉を試してみてください」という話をしました。いろんな粉と、いろんな油で揚げてみられたそうですね。車麩はどういうことをされたんですか。
田中 麩は、原料がグルテンです。それで、麩を直接つけたらどうなるのかなって、それだけなんですけど。でも、やってみたら意外と面白い効果が出たんです。エビの場合、衣を米粉と打ち粉に車麩、太白ごま油で揚げた時に素材のうま味とバランスがすごくいいなと思ったんですね。
川崎 グルテンが粉の中に混ざるか、粉として混ざるかでも違う。今までこんなことしなかったと思いますが、ちょっと変わった、面白そうな結果が得られたそうですね。エビの場合、揚げていると何かエキスとか出てきましたか。
田中 水分が出てきます。
川崎 メークインでも同じようにいろいろ試されたそうですね。
田中 メークインの場合は、衣に米粉、打ち粉、車麩も使い、綿実油で揚げた場合、冷めてもある程度うま味があって、なおかつ衣がサクサクしていたのです。それで、大人数分でも用意できるなと思って発表することにしました。エビは、やはり出来たてがおいしいので試食に出すのは断念しました。
川崎 参考に表を作ってみました<参照:表1>。揚げる油が綿実油ですから、この表で見ると、下から2番目の米粉に打ち粉で車麩ということです。今までないようなものが出来そうですよね。こういう実験をいろいろされてのプレゼンテーションです。では、田中さんよろしくお願いします。

田中 はい。まず2種類の衣を作ります。一つは普通の天ぷら粉。卵水は、うちでは黄身と水を混ぜます。大体黄身3個に対して水を500cc混ぜます。今回はそんなに必要ないので、それの半分ぐらいです。小麦粉を混ぜる時は、なるべく混ぜたくないので、最初に卵水自体を泡立てておくんです。よく泡立てたところに250ccに対して薄力粉95gを混ぜます。この時に、サックリとボールをまわしながら、衣は混ぜないようにします。これぐらいで止めておきます。
もう一種類は米粉です。米粉の場合は混ぜてもグルテンは出ません。逆に混ぜないと衣がつきにくいので米粉を入れてからよく混ぜます。小麦粉よりは少し多めにします。卵水250ccに対して米粉は100g混ぜています。
メークインを4等分にします。どれがどの衣か、わかるように爪楊枝を刺します。油の温度は、最初に入れた時で大体170℃にしておきます。衣を落としてみてすぐ揚がる時は温度が高すぎ。落ちて沈んで上がるぐらい、これくらいがちょうど170℃です。最初は、小麦粉を打ち粉して普通の天ぷらで揚げます。170℃の油に入れて大体2分。次に、米粉の衣で揚げます。もう1個は、車麩をちょっと粉末にして、それを打ち粉にして揚げます。これで170℃を保って2分。2分たったら少し火を弱め、大体160℃くらいまで下げて4分間揚げます。そうすると、意外と揚げあがりも変わってくるのです。小麦粉の場合は、衣が結構つくので中に火が通るのが遅い。米粉の場合は、そんなに衣がつかないので火の通りが早く、逆に早く揚がるという違いがあります。今回は同じ条件、同じ状態で食べていただいた方がわかりやすいと思い、すべて同じ時間で揚げます。
この間、ある天ぷら屋さんでメークインの天ぷらをいただきまして、それが本当においしく、中がトロッと揚がっていたのを何故かといろいろ考えました。実際にメークインをいろいろ揚げてみたりして、行き着いたのが今揚げている2年熟成のメークインです。普通のメークインではトロッとしないのですが、この2年熟成は糖分がだいぶ高くなっているので揚げるとサツマイモみたいに溶けるのです。天ぷらって、ある意味、素材に何もせず、素材を活かすのが大事なことやなと改めて思わさせられ、とても勉強になりました。



だんだん揚がってくると泡が大きくなってくるんですけど、泡の出が小さくなったら、揚げあがりのサインです。だいぶ泡が小さくなってきたので、そろそろ揚げあがりかなと思います。確かめるために天ぷらに串とか刺してしまうとそこに油が入って油っぽくなりますから、感覚で判断して揚げるんです。大体5分くらいたったので、もう一回、火を170℃に戻して2分間。そうすると周りがカリッとします。だいぶ泡が小さくなってきているのがわかると思います。ジャガイモは、なかなか浮き上がってこない。すごくわかりにくいんですけど、この泡の出を見て揚げあがりを確認する必要があります。不思議なことに、小麦粉の衣のは浮き上ってきませんが、米粉のは浮いてくるんですね。米粉は水分をあまり吸わないのでその分、軽くなって浮いてくるのかなと思います。小麦粉のほうはジャガイモの水分は少ないんですけど、甘味の分が重たくなるので浮き上ってこないのでしょう。
もうあと1分か2分です。これで大体揚がりましたので一回油からあげます。このまま出しても甘味はまだそんなに出ていません。2分ほど置いてみる、そうすると余熱でうまいこと中に火が入る。これがちょうどいい揚げ具合になるのです。見ていただくとわかるように、米粉と車麩で揚げたのは色がつくんですけど、衣の付きも小麦粉のと比べて多いですね。衣が多い分、冷めるとどうしても食感が悪くなります。その代わり、パリパリしています。でもパリパリじゃないか。天ぷらは僕のイメージでは「サクサク」ですね、このサクサク感を出すには、ある程度グルテンが必要なのかなと思いました。
今回、3通りの揚げ方がわかるように袋の紙を別々にしています。白いのが小麦粉(薄力粉)、普通の天ぷらですね。茶色い模様があるのが米粉で揚げたもの。もう一つが、米粉に車麩をつけて揚げたものです。揚げたてより少し冷めた状態の方がおいしさがわかりやすいと思います。とろけ具合、甘さ、衣の食感。すべて違うんですけど、僕は、冷めた状態でおいしかったのが米粉に車麩をつけたのだったんですけど、みなさんはどう思われましたか。以上です、どうもありがとうございました。




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