Program 1:プレゼンテーション+試食 [日本料理] 2/2
講師紹介
「メークインの天ぷら(三通り<薄力粉・米粉・米粉+車麩>の揚げ方で)」

門上 田中さん、初めての出演でお疲れさまでした。田中さんには事前に、東京の江戸前の天ぷら店や、静岡の天ぷら店とかに来ていただいたりして、いろんな話をしていただいたんです。そういうことで天ぷらに対する考えに変化はありましたか。
田中 そうですね。いろんな店にいくたび考えが変わります。それぐらい天ぷらって揚げ手によって違うのと、考え方でこんなに違うのだと思いました。
門上 日本料理の中で「天ぷら」とか「うなぎ」は、変わりようがない。ところが、このところ天ぷらのジャンルに新たなアプローチが増えてきて、興味がありまして、田中さんはどういうアプローチをされるのかなと思っていたんです。衣と油を替えるという発想は、これまであんまりなかったんですか。

田中 今まで天ぷら=小麦粉っていう頭しかなかったんです。たまに弁当用とかには米粉で揚げたりしましたが、唐揚げみたいになっていたんで、天ぷらと呼べるかというと微妙です。やはり小麦粉しか考えられなかったですね。
門上 エビには太白ごま油、メークインには綿実油。それと米粉と車麩の食感とか、グルテンについてとか、従来の天ぷらの考え方からすると、進歩というか変化が見られたように思われます。それをやれるかどうかは別としてですが。
田中 でも、やってみたいですね。時間長めに揚げるものは意外と米粉で揚げる方がおいしいかなと、今回、思いました。カリッとして、なおかつ中にうま味が残っていましたから。それと、お客さんに供する途中で衣を替えるのも面白いかもしれないと思いました。「これは小麦粉、でもこれは米粉で揚げます」みたいな。揚げる食材ではなくて衣で変化を出してみる。そこには異なる食感があって、ある意味、飽きさせない。最初から最後まで衣は小麦粉が当たり前ですけど、そこにひとつ違う食感の衣が入ったら、面白いだろうなって。
門上 揚げておられる時、浮き上がるスピードが小麦粉の分と米粉の分と違いましたよね。あれは、衣の水分量によって違うということなんですね。みなさん、召し上がっていただいてどうでしたか。吉岡先生、いかがでしたか。

吉岡 二度揚げというのは中国料理でもよくします。今回、田中さんは揚げてから2分ほど置いていました。中国料理の揚げ物の場合、たとえば鶏肉を揚げる時は高温で揚げて表面を固めて6割ぐらい火が通れば取り出す。取り出して休ませる。休ませることによってゆっくり熱が加わって、ドリップを十分溜めることができる。二度揚げの二度目に揚げる時は、表面を固めるだけ。表面の水分を抜き去るだけで加熱が目的ではありません。揚がったものは表面がカリッとして、中はジューシー。拝見したのは、中国料理とは真逆みたいな部分があって面白いなと思いました。ジャガイモは、もう少しホクホク感が出るのかなと想像していましたが、甘くてシットリしていたのは少し意外でした。
田中 2年熟成で糖分がだいぶ高くなっているので、ホクホクというよりどちらかというとシットリになるんですね、甘味で。
門上 今回は素材の違いということになるんですね。余熱に関しては、衣の粉によっても違いはありますか。
田中 はい。余熱は小麦粉が一番伝わりやすいです。米粉とか打ち粉の場合は、衣が薄い分、抜けやすい。蒸すっていうよりも、最初の下地で揚げられているという感じがおいしいかなと思います。
門上 天ぷらは、余分な水分を抜いてうま味だけを残すって言われますが、ある程度水分を残すことも必要なんですか。
田中 魚介とかはそうだと思います。ある程度、水分がないと生っぽくない。魚介は火が入るとすべて堅くなるんです。生っぽさをいかに出すかというと、どれだけ水分を残すかだと思うので、魚介の場合は必要かなと思います。
門上 水分を残しておくことは蒸すことにもつながっていくと思われます。山口さん、3つ食べ比べていかがでしたか。

山口 僕らはたっぷりの油の中でフライすることってあまりないんですよね。天ぷらというのは面白いテーマで奥深いんです。でんぷんの糖化とか、再構築とか、ディスカッションの時にたくさん話せるかなと思っています。
会場の会員 一番驚いたのは素材。このメークインすごいなというところがありますけど、それは置いといて。やっぱり、衣でこんなに違う。別に米粉の方がいいということを言いたいんじゃないんです。「やっぱりグルテン必要だな」「小麦粉ってすげーな」ということもわかった。何が大事かというと、日頃しないことをやってみることなんです。一回違うことをやってみて、もう一回戻ってくるプロセスって料理の中で重要なんですけど、日々の忙しい中でされていない。こういう機会があって、やったら、「小麦粉のグルテンってこういう意味ですごいんだな」と、今までの先入観を取り除けると思うのです。そういう意味で、こういう実験は手間をかけて日々の中でされるというのが重要だと思うんですね。天ぷらというプラットホームで、何が大事なのかというのを考える機会になった。今回よく違いがわかったんではないかと思います。
門上 これだけ衣で違うのかというのは、確かにわかりますよね。実験をしていただいて今日のこういう結果になったんですけど、あと、衣の厚さにもよりますよね。
田中 そうですね。素材と衣のバランス、天ぷらはそれが一番大事かなと思いました。小麦粉が一番素材に付きやすく、食感も一番バランスがいいかなというのは今回確認できました。
門上 衣以外は同じ条件でされました。170℃から160℃へ、もう一度170℃で揚げて、余熱を生かす。本来なら、それぞれの粉に合わせた温度と揚げる時間っていうのがあるんですよね。油への入れ方も違うんですか。衣の調整はどこでされるんですか。
田中 今回いろいろ試した中で、170℃がすべてのバランスがいい状態だったんです。小麦粉の場合は180℃で揚げてカリッとさせたかったのですが、それだと米粉の場合は焦げてしまうので、あえて170℃の少し低めで入れさせてもらいました。当然、粉によって違いはあります。衣の調整は、溶いた時の感覚といったら変ですかね。混ぜる時の粘りだけで感じているんです。今回初めてグラム単位で計らせてもらったんですけど、意外と粉を使っているなと思いました。
門上 今回の実験ではいろんなアプローチをされています。正解は多分、それぞれどういうものを作りたいかということで見出していただければよいと思います。天ぷらの「衣」と「揚げる」についても、もっと違うアプローチも出てくると思いますが、そこはこれからみんなでまた考えていきたいと思います。田中さん、どうもありがとうございました。

写真左:米粉の場合
真ん中:薄力粉の場合
右:米粉と車麩の場合

![料理の発想ワークショップ -天ぷらから発想する「衣と揚げる」の再構築-Program 1:プレゼンテーション+試食 [日本料理] 2/2](https://food-culture.g.kuroco-img.app/v=1774927651/files/topics/702_ext_2_0.jpg)