Program 1:プレゼンテーション+試食 [イタリア料理] 1/2
講師紹介
「仔牛と玉ねぎ」

坂本 僕の中では「天ぷら」は熱がこもっている料理です。外に向けて熱が放出しているより、中に向かっている料理。それを、どのように自分の料理に活かしていくか。揚げるに関してイタリア料理で思い浮かべれば、お魚のフリットみたいな揚げることで完結する料理が多い。その他いろいろある中で、揚げるというもの自体が熱い皿をつくり上げる調理法として活かせるのではないかと思いました。それと、天ぷらは中身の食材で水分が多いものに弱いなと。それがまず浮かんできて、天ぷらではない何か衣を使った料理を発想していこうと思いました。
次にイタリアンで何があるかと考えたら仔牛のカツレツですね。定番である料理で一番よく目にするのは仔牛肉を薄く叩いてパン粉をはたき、フライパンで両面を焼いて、ほぼ焼きたてを仔牛の肉汁とともに食べる料理です。すごくおいしい料理で、仔牛を料理するにあたって理にかなった料理かなと思います。長く肉汁を抱けない肉質なんで。カツという調理法、日本のトンカツですね、それを活かしてレストラン料理に落とし込もうと考えました。メニューは「仔牛と玉ねぎ」です。仔牛のロースに関しては、パン粉焼きとパン粉揚げのあいだみたいなところを突いた料理をやっていこうと思います。
食材について。今の時期、玉ねぎが多いんで玉ねぎを付け合せに使います。その料理からかかります。最初は玉ねぎのピューレです。僕は素材にブイヨンとかを足したりせず、極力その素材自体のおいしさを活かしていきたいと思っています。玉ねぎはスライスし、真空パックにしてスチームで100℃で1時間しっかりドリップするまで加熱します。ドリップ汁と玉ねぎ本体をザルなどで濾します。液体をしっかり煮詰めると濃度が出てくるんで、これをせずにベースに合わせると、ちょっと水っぽいピューレになるんですけど、ドリップを一旦ガーッと煮詰めることによって糖が上っているので、それらを合わせてピューレにします。こんな感じで、ずっと回しているとかなり滑らかになっていきます。これが玉ねぎのピューレ。一つ出来ました。間に肉のロースの部分をちょっと挟みます。仔牛ですけども、大体1人前の仔牛を小さく切っています。火を入れる前もオリーブオイルをまとわすだけで、この時点では一切塩とか胡椒とかはしません。温度は100℃、風を極力少なくした設定でオリーブオイルだけをまぶします。やりたいことは、オーブンとかで肉が宙に浮いた状態に近いもの。その中でじんわり、表面は少し乾燥しながら、100℃の熱は物体に当たると低くなると思うんですけど、やんわり火を入れたいので、こういう状態で火を入れています。
レシピのオーブンの時間は肉のポーションによって大幅に変わります。焼く場合は単純に10分も加熱すれば大体、肉汁も落ちつく。そういう考え方で肉の焼き方に関してはいつもやっています。仔牛の肉汁がドリップし始める手前ぐらいで、出来る温度、時間ということで今回のレシピはそうなっています。出来上がったものがここに焼いてある状態です。今まだ、かなり肉汁が表面に飛び出そうとしている、抱えている状態になっています。これぐらいで止めておいて最後にパネに持っていくんで、こんな感じで置いておきます。
次に付け合せに移ります。玉ねぎのピクルスです。生のピクルスはやっぱりちょっと辛い。よく生で浸けたりするんですが、僕は後味の辛さはあまり得意じゃないんで、ほんの一瞬だけ湯通しします。その場合、蒸すとかヴァプールとかよりも、濃い目の塩水の中でサッと湯通しして辛味を飛ばしたものを液体に浸ける。そのような調理法をとります。少し味を抜くような意味になるかもしれない。3%の塩水なので濃度の濃い中でサッと湯がきます。湯がくといっても、ピクルスなので玉ねぎの独特の噛んだ時の食感は少し残したいので、柔らかくならない程度、辛味を飛ばす程度にします。これぐらいの短い時間でOKです。酢は発酵力の強い酢ですが、そこに塩を1%効かせて浸すやり方でやっています。



肉のパン粉づけにいきます。現状で食べると若干のレア感がある状態で火が入っています。ここに一切塩をしていない状態で塩分を補う。仔牛の淡白さを補います。これは「サルティン・ボッカ」というイタリア料理の定番で、仔牛と生ハムを一緒に食べさせる料理があって、仔牛に対してハムのうま味がすごく合う、補っていて理にもかなっている。生ハムの塩分で全体的に均一に塩を当てられるような感じになっています。当たったところでドリップが始まるとかにもならないので、こういうふうに生ハムを巻いています。生ハムは衣をつけて、火が入った時点で生ハムの油が抜けるので、その分の衣が浮いたり、肉と衣の間の隙間の原因になったりもするので、どっちかというと生食しておいしくない、ちょっと脂が少ない部分を使うと、より揚げ物としての完成度は上がるのかなと見ております。
ソースの説明に入ります。これは簡単なもので、温めた牛乳にパルミジャーノと「マジヤクリ」という吉田牧場のチーズを合わせます。パルミジャーノだけでもいけるんですけど、吉田牧場のチーズの発酵臭がちょっと気にいっていまして、パルミジャーノの強いうま味と塩分のところに添えて、なんとなく複雑にしています。そこにカンボジアのアンコールペッパー、これは塩漬けにしたもので乾燥してないペーストにしたものをちょっと入れています。トンカツって、胡椒振りたくなる。ちょっとスパイシーにしたいので入れています。チーズを混ぜる時の牛乳の温度は80℃を目標にしています。溶けるけど、高温すぎないところが分離しないところかなと思っています。とりあえずこれでチーズソースは完成です。
肉を揚げます。油の温度は約200℃。高温の目的は、この中で調理をするというより、今つけたパン粉を固める、色づけるためです。肉の表面に一層膜をつけるようなイメージです。仔牛の肉汁を躍らせたい。それを一度に出来るのが揚げるなのです。仮にフライパンで焼く場合、一面ずつ焼くことになります。最初に焼きだした面と最後に焼く面にタイムラグが出て、衣自体が泣きだしてくる。揚げると、たっぷりの油の中で一瞬にして全面に火を入れきることが出来る。というのが、揚げる調理法のすごいところかなと思います。洋食の肉料理って、最後に炭火で炙るとか、グリルでガッと香りを出すというのが定番で、そこにこういう油で揚げる調理法を入れることが出来るなというのが、今回、思ったことです。ほんの少し焼く状態です。炙る時は結構、外へ外へ熱が出ていくような気がするんですが、衣のいいところは、天ぷらされている方は蒸し料理って言いますけど、出ていく熱というよりは衣によって肉の中に向けて熱が向かっている状態がつくれる印象があります。
肉を切ります。この時点で最後に断面に少しだけ塩を打ちます。これも打った時点でどんどんドリップを促進する効果があるので、これは最後にしたいと思います。周りの面の塩はハムとかで充分足りているので。これで完成です。付け合せの方に少しオリーブオイルをかけます。はい、こういう感じで料理は完成です。仔牛がもっていてほしい瑞々しさと、あと足りてないうま味とか香ばしさを揚げる調理法によって引き出す。揚げることによってギュッと表面が締まる。より肉汁が溢れ出したくなるみたいな。そこで止まっている。単純にこれはハイスペックなトンカツだと思います。トンカツも最初は低温で揚げますよね。それよりもコンベクションを使って丁寧に火を入れていく。そこに最後、二度揚げの二度目の油を使うみたいな。落とし込みとしては、肉の調理に対して揚げることが使えるのではないか、というところかなと思います。




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