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料理の発想ワークショップ -天ぷらから発想する「衣と揚げる」の再構築-Program 3:ディスカッション 2/2

料理の発想ワークショップ -天ぷらから発想する「衣と揚げる」の再構築-Program 3:ディスカッション 2/2

Program 3:ディスカッション 2/2

講師紹介

門上 新鮮な食材、おいしい食材に食感として衣をつけて、という話が出ました。坂本さんは、みなさんの話に何か感じるところがありますか。

坂本 自分が何を表現したいか、という川崎先生の「デザイン」の話が腑に落ちて。天ぷら屋だったら天ぷらという世界、その中ですべてを調理できることが自分のしたいことで。天ぷらを食べにきたお客さんが、今回のようにスチコンで揚げた仔牛を扱うと、違うと思われるでしょう。僕なら、表現したいものは何か、自分の店とは何か、とかを分析して揚げていく。熟成させて糖度を高めたメークインのように、何でもない普通のジャガイモでも驚かすことができるというのが「デザイン」ではないか。今日やったような揚げる技術を使ったデザイン、僕なりの表現の仕方もそうなのかな。僕がフライヤーひとつで「このジャガイモ、こんなにおいしくしました」と出すことは、僕には求められていないと思う。そういう研究が面白いなと実感できました。川崎先生のように科学的に分析してくださる方の意見を聞いて「自分はどう表現したいのか」というところで、やっていければなと思っています。

門上 まさに坂本さんが話されたように、それぞれの料理人がもっているもの、店のつくりも含めて何が求められているか。食べ手がどういうことを期待しているかも含めて、何を、どういうスタイルで出していくか。「揚げる」を科学的に分析することによって、いろんな見え方ができる。新しいアプローチも出てくる。その仕方はいろいろあると思います。それでは会場の会員にご感想、質問をお聞きします。

会場の会員 天ぷらから発想して再構築することは、最終的には何のためか。お客さんに「ああ、おいしいな」といってもらうためですよね。以前、串カツの店をやっていた時、串カツは満足感があって食べすぎたら胸がもたれるけれど、天ぷらは結構食べてももたれない。どうやったら面白い串カツができるかを考えました。串カツのおいしいところはラードを使うこと。けれど、ラードはもたれる。天ぷら屋でラードを使うところがなんでないのか。串カツをサクッと軽くするなら、ラードをやめてオリーブオイルを使ったり、天ぷらでごま油を使っているなら、ごま油でやってみようとかしてみました。ごま油でやると重くて食べられない。太白のごま油にすると、いけるんですね。でも、太白100%やったら重い。ちょっとサラダオイルを入れてみたり、香りがいいオリーブオイルを少しブレンドすると面白い串カツになったりする。今日、思ったのは、衣も揚げる油も再構築してやると、また違う天ぷらになったり、もっとおいしい串カツになったりするのではないかということです。もう一回考えると、さらにおいしいものができそうな気がしました。

田中 天ぷらでも、揚げる油のブレンドはあると思います。それ以外は変えられないですが。今日は、衣を途中で変えたり、油を途中で変えるとかしたら面白くなるのではないかと思えました。魚は太白で揚げるとか、いろいろ違いを知ったらバリエーションもできそうです。お客さんも、楽しいと思う。いいかなと思いました。

川崎 日本料理が面白いなと思うのは、同じプラットホームの中でコースを終えてしまう料理があることなんです。寿司とか天ぷらとか、調理方法は同じなんだけど、素材が全部違う。こういう料理、日本以外にはあまりないと思います。中国料理にもない。日本人は素材の違いを楽しみたい民族なのかな。僕も串カツが大好きで、創作串カツとかよく食べます。食べ過ぎてしまうのがよくないですが。一つの味を食べ続けていると、お腹いっぱいではなく、感覚がいやになるというか、脳レベルの話ですけど(感覚特異的飽満感)。串カツで同じ油で揚げていたとしても素材が変わるから食べられるんですね。平気で20本、30本いってしまうから怖いですよ。

門上 串カツの方が、そういう感じはしますよね。山根さん、寿司とか天ぷらのように同じ調理法だけでいくのは、西洋にはないですかね。

山根 強いていうとピッツアみたいな生地が決まっていて、そのバリエーションでいろんなものを出すとかですかね。パスタは広すぎると思う。結構、少ないでしょうね。イタリア人は串カツめちゃめちゃ好きですよ。フォーマットが同じで素材が変わっていって楽しめる。寿司もそういいながら、生の素材だけでなく、加熱したものとかバリエーションが増えてきていますものね。

門上 ピッツアの話が出ましたが、「天ぷら」の次は「ピッツア」「麻婆豆腐」と次回のことも考えていて。みんなが知っている料理で、再構築をどういうふうに考えられるかなとか検討中です。当然、ピッツアには山根さん、麻婆豆腐は吉岡先生に登場をお願いせねばなりません。ピッツアだと、どんな生地をという考え方もできるし、生地と具を焼くという観点からも考えられます。

山根 ナポリピッツアと、それ以外のピッツアは違うんです。ナポリピッツアに関しては、よく練って、もちもちした食感で、1分半で焼けることで水分を保水して生地が柔らかい。同時にすっきり、クリスピーという歯切れのよさを求められる。しかしこれは相反する要素で、練る時、延ばす時、焼く時にコツがあるんです。なかなか深くて、しょっちゅう配合を変えたり、練り方を変えています。そういうことを抜きにして、いきなりピッツアで全く違うアプローチしていくと何が何だかわからないようにならないかな。基本的なピッツアを僕なりの考え方でやらせてもらえたらありがたい。

門上 一応、これからのネタを振っていただきました。会員から串カツにもう一度、新たなアプローチをといわれました。和食の方で「衣と揚げる」ことに関して何かございますか。

会場の会員 天ぷらの延長上でジャンルを変えていくと、いろんな面白い点が見えてきたなと思いました。その入り口を見せていただいたような気がしています。日本料理というジャンルの中に閉じ込めてしまうのではなく、別のスペシャリティのある料理としてならば面白いのではないか。日本料理には違いないと思いますが。

門上 日本料理には違いないけれど、スペシャリティとしてとらえることができるのではないかというご意見。天ぷらは、そういう面ではいろんなアプローチの可能性を見せてくれました。油の中で調理するのは日本独特の表現方法かもしれませんが、天ぷらとかうなぎとか変化が少なかったものが、ここへきて特に天ぷらはいろんなアプローチが出てきている。関西にも以前に比べて天ぷら屋さんが増えてきた。『あまから手帖』の7月発売8月号は「上方の鰻・天ぷら・蕎麦」、関東のものと思われていたのが関西にも多くなってきているのを特集することになっています。山口さん、次回への要望とか最後にお願いします。

山口 僕の麻婆豆腐は結構おいしいんです。フランス南部にチーズを使わない「ピサラディエール」というピザに似た料理があって、京都でメニューにのせる店のママさんも今日は参加されています。坂本さんの「再構築」には、チーズ、ウィンナーシュニッツェル、パン粉の中にパルメザンを入れてやる部分を表に出して、食べた時に懐かしく感じられる味も表現されていた。時代が変わって情報が入ってくるようになり、フランス料理も今まではコースの中で起承転結をつければよかったんですが、今は一皿の中で起承転結をつけていかないとお客さまが飽きてしまうところがある。ですから、既存の料理を一皿レベルでも「分解」して「再構築」することによって味わい方を変えるのも面白いなと思いながら耳を傾けていました。川崎先生の説明には「こんなん、外でいってほしくないな」というか、資料もものすごい宝というか。手品の種明かしみたいなものですからね。楽しい研究会だと自画自賛してもう10年ですよ。

門上 川崎先生の天ぷらのストラテジーでは「下味、下加熱、衣、油、加熱方法」、この5つに分けることから始まって、再構築の考え方を示していただきました。これが正しいとか、最善の方法とかではなく、いろんな考え方の切り口がある。アプローチの仕方も違う。その手がかりを、一つでも頭の中に埋め込んでいただければ、料理をつくる時、あるいは食べた時の感じ方も変わってくると思います。「揚げる」と「衣と油」のアプローチも一回だけで終わるのはもったいないテーマだと思います。「揚げる」だけでも、まだまだできそう。

川崎 「入り口が見えた」とおっしゃいましたが、まさにそう。情報をバンと出して、そこから考えてという遣り取りがあればいいなと考えています。「知っていてやらない、できるけどやらない」という話と「知らんからできない、できないからできない」とではまったく違う。「こういう情報は知っている、わかっている、できる、でもあえてやらない、自分の店はこうやから」そういうツールにもなると思う。そうした観点で参加してもらえればよいのですが、選択するのはそれぞれ自分だということでしょうね。

門上 今回もいろんな話ができました。プレゼンテーションしていただきました田中さん、坂本さん、どうもありがとうございました。コアメンバーの山口さん、山根さん、吉岡先生。そして、川崎先生どうもありがとうございました。

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