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料理の発想ワークショップ part3 7つのキーワードから発想する「麻婆と豆腐」の再構築Program 2:スタディ 2/2

料理の発想ワークショップ part3 7つのキーワードから発想する「麻婆と豆腐」の再構築Program 2:スタディ 2/2

Program 2:スタディ 2/2

講師紹介

講演「料理人のための新しい料理をデザインする方法

川崎 寛也氏
農学博士、「味の素株式会社イノベーション研究所」主任研究員

■麻婆豆腐

麻婆豆腐は大好きです。なぜこんなに好きなのかを調べてみようと、ツイッターの情報を集積して分析してみました。人が書いているつぶやき。それを統計的な方法で計算して麻婆豆腐に関係するものだけを線でつないでみました。近いものが、関係が深い。麻婆豆腐は「おいしい」「ご飯」「食べる」「辛い」「豆腐」が近い。日本人にとってはおいしいという結果しか出ませんでしたが、中国ではもっと面白い結果が出るかなと思います。では、おいしい麻婆豆腐は何か。何かを考えるためのプラットフォームはどうあるべきか。4つの条件が挙げられます。「おいしい」「ルールが明確」。ピッツアも同じで明確なルールがある。「分解しやすい」「料理人の創造を刺激する」。この4つが大事。そういう料理を皆さんが見つけて、自分なりにアレンジすることで新しい料理、スペシャリティができるのではないかと思います。

「麻婆豆腐のプラットフォーム」を理解しましょう(*表5)。麻婆豆腐はなぜおいしいかを調理科学的に理解する。麻婆豆腐では豆腐、牛肉が入る。豆板醤は、そら豆の味噌で、辣椒(唐辛子)が入ることで豆板辣醤。そして花椒と考えた時、調理技術で重要なのはまず「豆腐を温める」。調理科学的な意義としては温度を下げない。柔らかくすることがある。重要な感覚要素として「熱さ」「柔らかさ」。牛肉は細かく切って油が透明になるまで炒める。肉汁を出して水分を蒸発させて肉に付着させてメイラード反応を起こさせる。それを「サクサクした歯触り」にもっていき、濃縮することで「鮮(うま味)」を感じさせる。豆板辣醤はそら豆を発酵してグルタミン酸を微生物につくってもらい唐辛子と合わせて香りが出るまで炒める。水分を蒸発させ濃縮させて不要な香りを濃縮させて「うま味」を出す。「辣」に関しては辛味、「麻」のしびれが花椒から出てくる。中国人がすごいのは、「麻婆豆腐で大事なのはこの感覚である」と決めたことです。これが必要条件なのか十分条件なのか。「おいしい麻婆豆腐をつくるためにはこれがあったらいい」という発想も「これがあることが麻婆豆腐で重要だ」ともいえる。7つの要素を中国人が発見した。つくり方ではなく、感覚を決めた。それが面白いなと思います。

表5:麻婆豆腐というプラットフォームを理解する

次に、「麻婆豆腐(から)発想するデザイン」と「麻婆豆腐(を)発想するデザイン」に注目してください(*表6)。今回は(から)に着目し、麻婆豆腐(から)発想するのを重要視しました。麻婆豆腐(を)発想するデザインは、豆腐とソースに分けた時、豆腐は大豆製品、白くて柔らかい食感としてとらえることができる。味はそれほどない。ソースは麻辣とうま味があるもの。原材料は肉のソースととらえることもできる。この分解によって、(を)を発想するベースが理解できる。(から)は、麻婆豆腐に重要な印象とか、麻婆豆腐に感動した感覚から発想する。だから、最終形態は麻婆豆腐でなくてもいい。つまり、松尾さんと山口さんがつくられた料理は麻婆豆腐ではなくてもいい、麻婆豆腐を食べられると思えたのは吉岡先生の麻婆豆腐だけだったのかなと。今日の狙いは、そこです。

表6:新しい「麻婆豆腐」のデザイン発想手法

(を)に関して(*表7)。豆腐をどうとらえるか。豆腐は大豆製品であるととらえたら、それを変換することもできる。もっと柔らかい豆腐とか厚揚げにしてもできる。干し豆腐でもいい。汲み上げ湯葉でもできる。「白くて柔らかいもの」ととらえると茶碗蒸しでもできる、白子でもできる。玉子豆腐でもできる。味がないもの、フェンピー(緑豆の粉)、緑豆でんぷんの麺、葛切りでもいい。ご飯でもいい。それで麻婆豆腐を発想することはできる。ソースも「麻辣」と「うま味」。生唐辛子、日本の山椒もある。一番だしを使う、ブイヨンを使うことでうま味を表現することもできる。肉のソースとすると、牛、豚、鶏、羊。蟹粉豆腐という上海カニの料理があります。これは麻婆豆腐ではないんですが、豆腐と上海蟹の肉を使う。新しい麻婆豆腐をデザインするのは、素材を変換していってできるもの。これを食べたら「白子の麻婆豆腐だ」という印象になる。

表7:新しい麻婆豆腐「を」デザインする

(から)に関して(*表8)。麻婆豆腐のすばらしさを展開する。どこに感動したか。麻婆豆腐に重要な要素をフランス料理に展開するには「麻」が使いづらかったら他のフランス料理のスパイスで表現してはどうか。日本料理は難しいですが、吸い口にピリッとした刺激、今日は山椒を使っていますが、何か刺激を与えるもの、椀ものがあるのではないか。今回は7つの要素全部を使っていただきましたが、その中でお店に出せるもの、どれだったら使えそうか、それを使うことで料理がもっと変わって、よくなったということが麻婆豆腐(から)発想する話です。

表8:麻婆豆腐「から」デザインする

■デザインとコーディネート(*表9)

「デザイン」と「コーディネート」は何が違うか。コーディネートは既存のものを組み合わせること。デザインは技術的な発見があり、技術的課題を解決して、さらに発展を及ぼすこと。それができることが料理人にとって大事かなと思われます。料理の発展にもつながっていく。既存のものを組み合わせるコーディネートだけでなく、デザインにチャレンジすることで全く違うものができるのです。

新しい料理は何でもありでしょうか。何でも発想して組み合わせて、「僕の料理」といってしまうことがいいのか。これは、東京のある中国料理店の前菜です。皿は横長が多いが、これは縦長に盛り付けている。「こういうふうに縦に並べることによって、お客さんの運気が上がる、縁起がいいように並べた」ということです。中国料理らしい意味づけです。で、ふと思ったのが、こういうことはストーリーです。日本料理や中国料理には多いです。フランス料理はないことはないですが、そんなにない。政治家の名前をつけたり、グレイトな料理人の名前をつけたりして、縁起みたいなのとは関係ない。フランス料理やイタリア料理は、文化、宗教、自然への意味づけを考えることによって意味のある料理として、ストーリー豊かになって面白い料理になるのではないか。これから必要なのは「自然への意味づけ」です。サステナビリティ(持続可能性)の表現にもなりますから、日本料理、中国料理、フランス料理、イタリア料理に関係なく、「素材への敬意を表現していく」と「見えないものを表現する」ことができれば、オリジナルかという疑問に対しても裏付けでストーリーが追加されて深い料理になっていくのではないかと思います。

表9:デザインとコーディネート

■新しい料理のデザイン発想手法(*表10)

新しい調理のデザイン、発想手法、発想するデザイン、分解して感覚から原材料を変換して料理をつくる。その料理に感動した要素を展開していくことが、(から)発想するデザイン。さらに、それを単にマトリックスを描いて自由自在に考えること+「見えない意味」を追加してデザインすることで、その料理の感動力をお客さんにアピールでき、食材と技術の向こう側にいくことができるのではないか、ということで話を終えたいと思います。

表10:新しい料理のデザイン発想手法

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