Program 2:料理実演と考察 [中国料理] 1/2
講師紹介
「中国茶のスープとショウロンパオのひと碗」

■料理実演
「だし」は、たくさんの食材を使って時間と労力をかけて抽出する。スープ料理というのはある意味では贅沢の極みでもあります。中国料理には頂湯(ディンタン)、上湯(シャンタン)、清湯(チンタン)、二湯(アルタン)、毛湯(マオタン)、白湯(パイタン)、素湯(スウタン)などたくさんのスープがあります。頂湯はコンソメに匹敵する濃いスープでフカヒレ、ツバメの巣など、主に高級な料理に使用します。毛湯は鶏ガラや豚骨で取るスープ、ラーメンや焼きそばの餡などに使う安価なスープです。スープは煮て取る方法が基本ですが例外もあります。それは脂肪や皮を取り除いた肉を大きくぶつ切りにしてからさっと湯通しして分量の水を加えて蒸す方法です<参照:図1>。できればスープを効率よく取りたい。今日はそのチャレンジです。スチームコンベクションオーブンで二つの「だし」を取っていきます。一つは白湯(パイタン)スープで白濁した濃厚なスープ。もう一つは澄んでクリアな清湯(チンタン)スープです。この二つのスープを使って、一品をつくりたいと思います。

まず、白湯(パイタン)スープ<参照:図2~6>。鍋で脂肪とコラーゲンが多い食材を煮込んで取る。主に豚足、豚骨、豚の背脂、モミジといわれる鶏の足などがオーソドックスな食材です。100℃前後の加熱温度で2時間半~3時間、コトコトと鍋に蓋をして中が沸騰する状態で脂肪と水が乳化する状態をつくる。この場合は水の中に油脂が入りこんで乳化していく。蒸すだけでは同じような効果が出ないので今回はスチコンで取ります。脂肪分とコラーゲンに対する食材として豚の網脂とフカヒレの軟骨を選択しました。灰汁が少なく、脂肪やコラーゲンを多く含み抽出しやすい食材で、豚骨、豚足、モミジの代用として適していると思います。そこにできれば、うま味成分を転化したいので、豚の赤身肉、すね肉、ヒネ鶏、中国ハムといった食材を加えました。またスチコンでもできればメイラード反応を期待したい。では、実際にスチコンでスープを取っていきます。短時間でうま味を抽出したいのでヒネ鶏は骨がありますが、すり身にします。このプロセッサーは骨も粉砕できます。さっとぶつ切りにした肉類をボイルして灰汁を出してから、実際に取るスープの煮詰まった量と同じ分量の水を加えて粉砕します。フカヒレの軟骨も同じように分量の水を加えて粉砕します。皆さんにはテイスティング用の白湯(パイタン)スープが配られていると思いますが、想像以上にコラーゲン、ゼラチン皮質が多いと感じられるかもしれません。





それぞれ別々に粉砕し二つをスチコンに入れて加熱して抽出してみます。メイラード反応と液体が煮詰まることを期待して設定は150℃で120分。取り出したらもう一度粉砕して漉してから合わせたものが白湯(パイタン)スープです。この二つを別々にして蒸しました。豚肉とヒネ鶏と中国ハムで取ったスープは上湯(シャンタン)と同じ。おいしいスープです。フカヒレの軟骨はペースト状になりますが完全には溶けない(数回使える)。できたものを漉すと白湯(パイタン)ができる。この二つを合わすとうま味の強い白湯ができる。豚足、豚骨、モミジなどに比べてフカヒレの軟骨、網脂は扱いやすい。スチコンにも合う。フカヒレの軟骨は白湯(パイタン)を使う人には食指が動く食材ではないかと思っています。
スチコンと煮るのと、どう違うのか。煮る場合は100℃で2時間半~3時間加熱して抽出したのが白湯(パイタン)です。そこにはメイラード反応が起こるでしょう。スチコンはどうか。フカヒレの軟骨と豚の網脂で抽出したスープと上湯(シャンタン)と同じようにアミノ酸のうま味成分のある澄んだスープができる。これらを一緒にすることで白湯(パイタン)ができる。加熱温度150℃では煮詰まり、アミノ酸を多く含む澄んだスープにはメイラード反応を期待した。実際に、煮る時間が3時間50分とか4時間近くになるとスープは茶色になるかと思います。煮て取る白湯(パイタン)は黄色になる。今回の白湯(パイタン)は、白い。これは、加熱時間や食材によって違う白湯(パイタン)が取れることを示す。癖が少なく、脂肪とコラーゲンを多く含んでいて、単体で加熱すればどんなスープにも加えるだけで白湯(パイタン)が取れる。豚足と豚骨は、スチコンでは灰汁が強すぎてできないので汎用性がない。今日はこの方法で取った白湯(パイタン)スープを試飲していただいています。口がくっつくくらいにかなり濃厚になっていると思います。
次は清湯(チンタン)スープ、透明でクリアなスープです<参照:図7~9>。煮るのではなく蒸してスープを取っている例を紹介しましたが、肉は大きくぶつ切りにすることがポイントでした。これを今回は豚の赤身肉とヒネ鶏、リュウガンというフルーツの果肉にスープの煮詰まった量と同じ分量の水を加えて粉砕しスチコンに入れます。現在もこの手のすり身を使って取るスープは鍋でゆっくりと加熱しながら澄んでくるのを待って煮詰めてから漉しています。加熱が進むと同時に肉は小さな粒状で固まり、タンパク質が凝固する時に灰汁を抱えて浮いてくることで澄んでいく。小さな肉の粒は味が出やすく澄みやすい。スチコンでは150℃に設定すると10分くらいでハンバーグ状の固まりになります。もちろん、液体は透明に澄んでいく。しかし固まり状のものからうま味を抽出するには味が出にくい。そのために最初は100℃で加熱して、次に150℃で加熱すると顆粒状になって味が出やすい。このような方法がベストなのかなと思います。目盛りをセットさえすれば、ある程度のものができるのがスチコンのいいところだと思います。大阪ガスさんに圧力ブレージングパンというのがあるそうで、圧力をかけながらコンソメスープが取れる。温度設定をすれは100℃から途中で150℃にしなくても取れるのかもしれません。この「ハグ・ミュージアム」に設備があるそうなので、各自で確認されるといいと思います。スチコンでも、このようにして二つのスープが取れました。




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