Program 2:プレゼンテーション解説 1/4
講師紹介
講演:「つなぐ」のデザイン

科学はツールであって、それを使ってデザインするという概念はこの会でこれまでよく話してきたと思いますが、今日は「つなぐ」のデザインということも考えていきたい。ただ、今日のロジックはまだまだ甘いところがありますから、この1年間をかけて練っていけばいいかなとは思っています。
写真(参照:地方でやるガストロノミー)の料理は、「Noma」の料理です。何の料理かというと、魚の頭ですね。魚の頭を味噌漬けにして焼いたんだという。10年ぐらい前で実際おいしかったんですけど、彼らからすると、今まで魚の頭は食べてなかった。それを使ってるからすごいでしょっていうんです。そのときから彼らはSDGsとか、そういうことを考えていたわけなんですね。我々日本人からしたら、これは普通にあるけどな、ということですよね。つまりそれだけ文化による違いがあるわけなんです。何が重要で何が重要でないか、使ってきた、使ってこなかったというのは、その土地の人が決めてきたことでしかないんだと、そのときに思ったわけなんです。

■なぜ日本人なのにフランス料理をおいしく感じる?(参照:図1)
麺をざっくり説明する表をつくりました。最初が「成分変化」。どういうものを使って、どう変化させるか。以下順に、粉を形につくらないといけないので構造をつくる「構造形成」。さらに「成分を変化」させる場合があり、人間が食べやすいように「整形」する。整形の技術もいろいろある。最後にさらに「成分変化」があり、「盛り付け」をする。何と組み合わせるか。そうして最後に、麺が何になるかが決まるのではないか。参考に、天ぷらも入れてみました。

アフリカで200万年前に人類が誕生して、その後、いろいろ進化を経て世界中に散らばって移動していったわけですね。これは、グレートジャーニーという概念です。そのときに、結局自然っていうのが、南米、アフリカ、北欧、アジアと、それぞれの地域で全然違うわけですね。その自然というのは食材です。そこにある物を人間が食べないといけない、栄養として取り入れないといけないのだけれども、栄養欲求はほとんど変わらないような状態で移動ができた。マラソンを見たら分かると思いますけど、人間は長距離歩くことに徹するような進化を遂げたんですね。だから、遠いところまで移動できた。しかも、賢くもなった。道具を使ってその土地にある自然を食べた。ライオンのかむ力と我々がかむ力は全然違うじゃないですか。どんどん顎も弱くなり、脳だけが大きくなって、遠くへ歩ける、けれど栄養欲求は一緒。そういう人間が自然を取り入れる。その加工が料理だったんですね。加工することでいろんな文化が生じて、というか、その違いが文化だということです。
ゴボウは考えたら根っこですよね。よう食べる気になったなと思いませんか。つまり、例えばある土地の人がこの根っこ食える、栄養になるでと思ったんでしょう。澱粉がいっぱいあって、それを料理して食べるようになっていった。他の土地の人からすると、あの地域の者は根っこを食いよるでとなる。そこで、ある種の区別というか、差別というか、あいつら根っこしか食えんのかみたいな話もあるかもしれない。でも、ちょっと食べてみようかと思う人もいて、根っこやで、おいしいわけないやろと、ところが食べてみたらおいしい。そうやって少しずつ広がっていく。それが食文化の伝播です。加工技術として広まっていくこともあるでしょう。その加工技術の面白いところは、地域で得られた独特の食材で発達したはずです。海とか山とかで採れた食材は独特の発達をした調理技術で加工しないと食べられません。その逆もまた面白くて、特に権力者がいる土地や都市、そういう中央で人と食材と権力が集まると、技術が発展する。それがまた地方に戻される、みたいなことも繰り返してきたはずです。何となく全体のイメージはわかっていただけましたかね。これは復習です。関西食文化研究会のホームページを見ていただくといろいろ公開されていますから、さらっといきますけど、そのときにじゃあ人間がどういうふうな栄養欲求を持っていて、味とか香りとかの関係はどうかというところを踏まえて、文化というのを考えていきたいと思います。
■おいしさとは「栄養摂取の悦び」(参照:表1)
おいしさとは何ですか。一言で言うと「栄養摂取の悦び」です。栄養素として必要なのは、炭水化物、たんぱく質、脂質という3大栄養素。ミネラルも必要です。腐敗物とか毒物は当然避けたいですね。ところがちょっと問題がある。炭水化物、たんぱく質、脂質をどうやって認識するか。我々動物が認識するには受容体っていうんですけど、あるセンサーでキャッチしないといけない。ですが、我々が持ってるセンサーは小さい。炭水化物、たんぱく質、脂質の分子が大き過ぎるんです。だからキャッチできないんです。じゃあ、どうするか。例えば澱粉でいうと、片栗粉って澱粉の塊なんですけど、あれを口に入れても何の味もしません。それは分子が大きいからなんですけど、それを分解したものを認識しよう、というふうに仕組めたのが我々動物の戦略なんです。炭水化物を酵素で分解したものが糖、たんぱく質を酵素で分解したのがアミノ酸、脂質に関しては酸化させて脂質酸化物の香りとして、ミネラルについては塩。避けたいものは、それぞれなぜか酸性成分が出たりとか、毒物についてはアルカロイド、そういうものを認識するようになっている。感覚としては、糖は甘味、アミノ酸はうま味、脂の香り、塩は塩味。そういう感覚として最後の精査を決めてきた、口に入って最後は吐き出せるのが最後の関門ですから、そういうのが人間なわけ、動物全般そうなんですね。そのうち面白いのがこの組み合わせ、糖、炭水化物とアミノ酸、脂質。で、何かというと報酬、いわゆるやみつきになるものがこの組み合わせなんですね。つまり甘い砂糖は味は甘くてカロリーもあり、それだけでやみつきになる。さらに、炭水化物だけでは駄目、アミノ酸だけでも駄目なんですが、この2つを組み合わせたものだと、やみつきになります。それは何だと思いますか。うどんですよね。うどんみたいなものとか、お寿司もそうですね。あと、脂は、脂だけでやみつきになります。これがまず原理原則です。


