Program 3:トークセッション 2/4
講師紹介



門上 次の質問です。店が一代限りの場合、技術や食文化も含めてどのように体系化して引き継いでゆけばいいかという、なかなか難しい質問がでてきました。筒井さん、さっき山根さんがどの時代に学ぶかとか、年月にもよると話されていましたが、筒井さんと山根さんとの長い師弟関係の中で今感じられてることはどんなことですか。
筒井 店を辞めてしまうと、師匠の料理を食べる機会はかなり減りましたが、先ほど師匠が言ったように、その時代その時代で全然違う。違うんですけど、根本的なところはずっと変わらないなというふうに感じていて、それを僕としては僕の店に来てくれた者たちに受け継いでもらいたいと思うんですけど。それをどれぐらい受け継いでくれるかっていうのは、僕もわからない。僕も一代かなっていうのはつくづく思ってます。そう思ってらっしゃるオーナーシェフも結構いらっしゃいますんで、その辺に関しては受け取る側次第かなっていうふうに僕はずっと思っています。
山根 僕が思うことなんですが、僕は最適調理っていうのを90年代初めぐらいからずっと言い続けています。でも、最適調理って非常に抽象的な話で、何をどうしたら最適かっていうのはいろいろあるし、器具が変わったり、解釈が変わったり、変化する部分はたくさんあるわけですね。僕は、若造が始めた君の料理はイタリア料理じゃないってずっと言われたんですよ。何をすればいいのかすごい悩んだ時期もあって、わからなくなったときもあったんですね。そのとき、最適化しようと思ったんです。最適ということは、最強といってもいい。世界で通用すること。例えば肉、ジューシーに軟らかく、香りよく焼けてる肉を嫌がる人はいないと思ったんですね。パサパサのほうが好きとか硬いのが好きっていう人は、世界にもあまりいないじゃないですか。そしたら、それは肉を調理するという段階において世界共通だなと思ったんです。イタリア料理にするかどうかは、そっから先でもいいと。自分の解釈としてのイタリア料理は、僕のバックボーンがあるので、僕がおいしいと思うイタリアン人の食習慣にのっとった何かが欲しい。だけど、基本的にそのパーツに当たる材料は、最適に調理されていなければいけない。もしかしたら、イタリアの調理方法では最適にならないかもしれない。古い時代のものもあるし、それは日本料理も中華料理にも全部に言えることで、時代が進んでいくということはより理にかなった、合理的で一番最適と思われるものに変化していくこと。最適化が進んでいるというふうに僕は考えてます。そこを指標にして料理を始めようとあらためたんですね。
その間に、筒井とか、いろんな正直多分200人ぐらいの料理人が僕の下から出たと思うんですが、みんなそれぞれが個性を持っているので、僕がいつも思っていたことは、共通認識をチームの中では持ちたいと思いました。共通認識が最適化の考え方だったり、基本的な調理の仕方に当たるもので、それをどのように扱いどう組み合わせればおいしいと思うかというのは、その人それぞれが考えればいいと思っていました。だから、受け継がれるものというのは、多分そういう基本的な考え方だと思います。
それぞれの人間で、生まれた時代も、育った場所も、例えばイタリアに行くなら行った時期とか、そういうのが違うと持ってるものも違ってくるんですよ。これは、一緒にならないんですよ。社会の構造についての考え方も多分違う。だから、そこに共通性は求めない。僕は、僕の時代に生きた人間なので、できるだけどんな時代になっても生きていけるように柔軟にやろうとはしているけれど、同じ素材を見たときに最適化する方法についてはきっと共通認識を持っていなければいけない。けれど、どう仕上げていくか、どういうふうにお客さんに感じてもらい感動してもらうかっていう部分については、きっと違うはず。その辺を継いでいくということで、例えば筒井とか他の人間がそれでも継いでるんだと思うんですよ。だから、一代しかできないのは個性であって、個性と時代であって、じつはつながっていると思います。

