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途絶えつつある日本の食文化を 守り、育て、次の未来へ(公開前記事サンプル)

途絶えつつある日本の食文化を 守り、育て、次の未来へ(公開前記事サンプル)

生産者:株式会社Silver Back 多田ゆきさん

大阪府泉南郡岬町

 消えゆく幻の食用兎「日本の食用兎」を守る


かつて日本で当たり前のように根付いていた食材が、失われるかもしれない危機に瀕している。それが兎肉である。私たちが日常的に使う「兎を1羽、2羽と数える」という不思議な風習。実はこれこそが、かつて日本に深く息づいていた食文化の名残だ。江戸時代、四つ足の生き物を食することが禁じられる中「兎の長い耳は羽根であり鳥の仲間だ」と言い張ってまで貴重なタンパク源を求めた庶民の執念がその語源にある。
 

品種存続を願い、家畜として繁殖を決心

「家畜」から、1960年代のペットブームを経て「愛玩動物」へと人々の価値観がシフトし、いつしか食卓から姿を消した兎肉。食文化とは、社会や時代によって、姿を変えていくものなのかもしれない。しかし、現代の風潮のなかで「命をいただくこと」に実直に向き合いながら、大阪・岬町で食用兎肉を生産しているのが多田ゆきさんだ。
兎はペットなら高額で取引される一方で、食材になると高値はつかない。こうした市場の背景も生産者の減少を加速させた。日本では食べることが少なくなり、利益も多くは見込めない兎肉。なぜ、多田さんは生産を始めたのだろう?
「食用兎自体が絶滅危惧種です。食文化としても種としても、途絶えさせたくなかったのです。ただし単に歴史ある食材を懐かしんで残したい訳ではありません。今の人が『おいしい』と感じ、もう一度食卓へ迎えたくなる形で届けたいのです」と、想いを語ってくれた。
当初は「残酷、かわいそう」と厳しい言葉を投げる人もいたという。それでも「こうした挑戦の先にこそ、大切な文化と味覚を次代へ繋いでいく道がある」と考えたのだ。

 

細やかな工夫が実現する、シェフも絶賛する肉質

目指したのは、現代人からきちんと評価され、選ばれ続ける食材であること。だからこそ、希少性に頼るのではなく、味そのものに価値を持たせることに力を注いできた。既存の秋田改良種をベースに、旨味、香り、食感、素材としての使いやすさまで見つめ直し、この時代の食卓にふさわしい形へ磨き上げた。こうして完成したのが、ブランド食用兎「兎龍月夜(うりゅうげつよ)」だ。
兎は非常に繊細で、環境の変化や物音、匂いなどに影響を受けやすい。飼育環境はできる限り静かで清潔に保ち、ストレスを抑えることを重視。夏の暑さは命にかかわるため、クーラーや扇風機を活用して温度管理を徹底する。こうした日々の積み重ねが、余分なクセがなく、旨味の豊かな安定した肉質に直結するのだ。
飼育法、捌き方に工夫を凝らし、肉は納品日前日に精肉。鮮度にもとことんこだわり、できる限り良い状態で届ける体制をとることで、食材としてのポテンシャルを最大限に引き出す。
四つ星レストランや一流ホテルのシェフからも「臭みがない」「旨味がしっかりしている」と折り紙付き。希少性ではなく「おいしさ」で選ばれている証拠だ。
その味わいは、フレンチやイタリアンだけでなく、和食にもよくなじむ。調理法によってさまざまな表情を見せるのも、「兎龍月夜」の魅力だろう。
 

 

食文化を継承するため、啓蒙活動にも取り組む

生産や販売だけにとどまらず、外へ向けた情報発信にも力を入れる。「なぜ残していくのか」「なぜ食べるのか」を言葉にしなければ、食用兎を知らない人へ伝えるのは難しいためだ。
「受け入れるのが厳しい人もいることはわかっています。それでも『そういう食文化もあるのか』と、先入観にとらわれることなく見てほしい」と多田さんは願う。命をいただくことの意味を改めて問い直しながら、食文化と血統を絶やさないための挑戦を見届けていきたい。
 

 

●新しい接点をつくる活動にも力を注ぐ

 

 

兎肉のおいしさと魅力を伝える大きな機会の一つして、さまざまなイベントで試食などを実施する。2025年は大阪・関西万博ORA外食パビリオン「宴~UTAGE~」内で開催された「オオサカKizuなイチバ」にも出展し、兎龍月夜の認知拡大に尽力した。

 

●ふるさと納税の返礼品にも登録

 

 

兎龍月夜は、飲食店やホテルにしか卸していないが、ふるさと納税の返礼品に登録し、一般の人にも存在や味を知ってもらえるよう入り口を広げた。調理方法はレシピサイトなどにも掲載されているため、ぜひ一度味わってみて欲しい。

 

●動物園に出張して存在をPR

 

食用兎を展示してくれる動物園や動物公園には積極的に貸し出しも行う。品種についての情報や歴史を発信する、絶好の場として活用するためだ。
 

 

●細やかな環境管理でデリケートな兎を守る

兎は、とても繊細だ。地域放送の音がストレスになって命を落とすこともある。さらには人の出入りする気配や音、自らの排せつ物の匂いさえも不調の原因になるため、静かな環境を保つほか、敷き材も独自に工夫をこらす。
 

●暑さ対策も重要なポイント

夏の暑さから命を守るため、兎小屋はクーラーと扇風機を常に稼働して温度管理を徹底する。

 

●出前授業で命と向き合うことの意味を伝える

小中学校で行われる「命の教育」にも協力し、出前授業を実施。児童には「兎は可愛いけど、食べることは『可哀想』じゃない。あなたたちの命になっていくもの」と、命をいただくこと、感謝することの大切さを伝える。 

 

●成長に合わせて配合するオリジナルの飼料

味や肉質を左右する飼料にも、こだわりが光る。成長段階や体調に応じて配合を工夫し、状態を見ながら調整を重ねるほか、妊娠期間など特別な時期はさらに必要な栄養を追加する。餌は肉の香りや質感にも影響する。“どう育てるか”そのものを味づくりの一部として考える。
 

●豊かな旨みは和食とも好相性

兎肉はイタリアンやフレンチの印象が強いかもしれないが、和食とも相性は抜群だ。串焼きをはじめ、土瓶蒸し、そぼろ丼などで、洋食とは全く違った味わいを見せてくれる。

[取材日2026年6月10日]
 

取材協力

株式会社Silver Back
 

大阪府泉南郡岬町多奈川東畑490

tel:072-493-3057   携帯:080-8420-8129 fax:072-493-3257

mail:tada1.silverback@gmail.com

Instagram:@uryuu0902

事業内容:兎肉「兎龍月夜」の飼育および販売。

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