河内蓮根(かわちれんこん)

正月に欠かせない食材の代表に蓮根がある。大阪府門真市は低地の湿地が多かったこともあり古くからハスが栽培され、明治以降は水田でハスの根つまり蓮根づくりが行なわれてきた歴史をもつ。
その伝統を受け継ぎ、今も門真で蓮根を栽培する農家のひとつ、中西農園の中西正憲さんを訪ねた。「門真のは、もともと自生のハスから育ったものなので貧弱だった。そこで、大正時代に当時品質の良い蓮根が採れていた石川県や岡山県から種蓮を移植して、他と見劣りしない蓮根に改良されていったのがルーツ」と話す。
蓮根づくりは4代目となる中西さん。「蓮根は、毎年収穫したなかから無傷で子レンコンが付いたものを植え、育てることを繰り返す。だから、品種改良されて100年も経つと熟成されるのか、今では他にないほど見事な蓮根ができる」という。
ちょうど収穫期とあって、中西さんは実際に掘って見せてくれた。端で見ていると、畑といえども沼池に入り、水を掻き出し泥土を掘るのは格闘さながら大変な作業だ。なにせ蓮根は土の中、姿が見えないのだから。「代々受け継いできた、この粘土質の土壌だっていい具合になっている」と言いながら、中西さんは手で探る。やがて、身の丈ほどの長さに育った(根、節、芽やハスの葉になる茎などがひと揃い付いた)1本が、丸ごと折れずにきれいに採れた。
「門真の蓮根といえば、地元ではよく知られていたけれど、少し前までは、それ以上なかなか広まらなかった」。そこで、中西さんたちは市場に卸すだけでなく自らで新たな流通経路を開拓していき、「河内蓮根」の名で売り込んでいった。そうした努力の積み重ねに加え、地元産を大事にする機運や「浪速魚菜の会」などの応援もあり、ようやく近年、注目を集めるようになった。料理人のなかでも「河内蓮根」を使う機会が増えるにつれ、評価を高めている。
「肉厚で繊維質が詰まっており、煮ると餅のように柔らかくなるのが特徴。モチモチとした食感で食べごたえがあるよ。すりおろして料理してもらうと、旨さをより味わってもらえる」と中西さん。「肉といっしょに焼けば、油がよくからまるから旨いよ」という。
歴史のある門真の蓮根が、その独特の味とともに「河内蓮根」として知られ、大阪の伝統的な野菜のひとつとして広まるなか、中西さんは、さらなる普及を目論み、ついには自分で料理店「れんこん屋」を開いてしまった。店はこの10月にオープンしたばかり。時には自らカウンターの厨房に立ち、料理することもあるとか。「料理人さんに来てもらえば、河内蓮根の旨さを活かす料理を教えてあげますよ」。
ただ生産するだけでなく、おいしさを引き出すために料理にまで踏みこんでいく。食材ひとつにも、作り手も食べ手も互いに高めあってきた食の都・大阪らしさが垣間見えるのだった。
[2009年11月26日取材]



河内蓮根(かわちれんこん)
中西さんおすすめのメニュー・レシピ
「河内れんこんの白あえ」 | |
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材料(5人前) | 作り方 |
・河内蓮根500g ・白みそ130g ・いりゴマ80g ・木綿豆腐150g ・砂糖130g |
1.蓮根の皮をむき、1cm幅の輪切りにして水でさらす 2.さらした蓮根を30分ほどゆがいて、ざるに取っておく 3.すり鉢でゴマをよくすり、白みそと砂糖を入れてよくすり、最後に豆腐を入れてする 4.あえ衣にゆでた蓮根をあえる |
中西さんおすすめの河内蓮根がおいしく食べられる店 | 中西さんの店 | |
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日本料理 仙亭 大阪府門真市末広町71 06-6905-3333 http://sentei.jp |
黒門市場 中島商店(総菜店) 大阪市中央区日本橋2-3-2 06-6634-0363 |
「門真 れんこん屋」 大阪府門真市千石西町12-6 072-885-2348 (営業:17時〜22時ころ・水曜日定休) |
[ 掲載日:2009年12月7日 ]