人気メニューに集約されたつながりの賜物・淡海地鶏

京都の人気イタリアン「京都ネーゼ」は、京都風を表す店名のとおり、京都ならではの食が楽しめる。木屋町通りの北限に近い三条通りを渡ってすぐ、ビルの3階にある店内は割烹を思わせるカウンタースタイル。深夜まで営業しているから、はしごしても立ち寄れ、メニューはアラカルト中心で使い勝手がよい。
オーナーシェフの森 博史さんは、京都で料理人の道を歩み始めた。長らく母校の京都調理師専門学校で学生を指導したこともあり、いつしか、自らのテーマを「京料理の心と技を大切にするイタリア料理人」とするほど、京都になじんでいた。
「日本料理を学ぶつもりで京都に来たんですが、選んだのはイタリアン。でも、お手本は京料理。まわりには、見習うべき料理人が多くおられ、お付き合いさせていただくなかで得たものは計り知れません」
そうしたキャリア、経験、人のつながりが背景にあるから、京都らしい店づくりが可能だったのだと思われる。カウンター越しに、常連さんの求めに応じて料理する姿は、まさに割烹のイタリアンだ。
スタイルばかりではない、森さんの料理が評価を高めているのは間違いない。メニューには、地場の食材をはじめ、岩手産白金豚など各地の名産品が並ぶ。旬ごとに違った料理を味わえるから、それを楽しみに来店するリピーターも多いという。
なかでも人気メニューのひとつに「淡海地鶏(内蔵)の軽いスモーク」がある。森さんに話をうかがえば、この一品は、さまざまなつながりによって生まれたことがわかる。
きっかけは、淡海地鶏との遭遇という。情報源は教え子のひとり。「勧められて行った、大阪の炭火焼鳥『うずら屋』さんで食べた淡海地鶏がおいしくて、生産者を教えてもらったんです」と森さん。それで、活地鶏専門店「かしわの川中」の川中高平さんを知る。
「初めに川中さんから鶏肉の扱いや衛生などの講習を受けるんです。話するのは、それからですよ」。そうして、森さんと川中さんの付き合いが始まる。「飼育や解体処理だけでなく、料理することまで身を以て取り組んでいる。川中さんの地鶏にかける姿勢には刺激されました」と森さん。
衝撃の味だった淡海地鶏は、たどっていくことで生産者とのつながりへと発展してゆく。しかし、川中さんの店も人気店ゆえ、まわしてもらえる数量には限りがある。「それで、内蔵に目をつけたんです」。
次はその調理法だ。「地鶏には炭火焼き。それに演出効果も考え、スモークにしよう」。それに見合った食器も必要。「これは、前から付き合いのある陶磁器会社エスエスカーサの担当者に相談。スモーク用の食器があるのを教えてもらいました」。
こうして、いくつかのつながりを経て、新メニュー「淡海地鶏(内蔵)の軽いスモーク」が完成。背ギモ、丸ギモ(脾臓)、トサカ(鶏冠)などの他、オスにしかない白子、メスにしかない卵管、卵巣などという希少な部位が食べられるのだから、お客さんにも大好評。「京都ネーゼ」の人気メニューになった。
川中さんは、森さんを「打てば響く人」という。「森さんは感性も豊かだし、引き出しが多いから、何でもできる。だから、こちらからどんなモノを送るかは、まかせてもらってる」と、今では、互いに信頼しあえる仲なのがうかがえる。
「京都ネーゼ」は07年8月の開店だから、まだ3年。森さんの引き出しから、どんな料理が生まれ、どういうふうに京都らしさを発揮していくか、これからがますます楽しみなイタリアンである。
[2010年10月11日取材]






住所 | 京都市中京区三条木屋町上る三軒目三条木屋町ビルⅡ 3階 |
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TEL. | 075-212-2129 |

[ 掲載日:2010年10月20日 ]