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分科会&コンフィデンシャルランチ「牛肉研究~手当の心と妙技~」Part1・Part2

分科会&コンフィデンシャルランチ「牛肉研究~手当の心と妙技~」Part1・Part2

Part1:牛肉6種と、その特徴

今回用意いただいたのは(滋賀)近江牛の未経産ランプ、(鹿児島)経産和牛ランプとリブロースの2種、(岡山)吉田牧場ブラウンスイスの枯らしたバージョン、(熊本)東海大学産あか牛、(北海道)駒谷牧場アンガス牛の6種が登場。まず新保さんから各牛肉の特徴について説明がなされました。

新保氏の解説

最初の三種類は牛舎で飼っているものです。
まず「近江牛(滋賀)」は子供を産んでいない未経産のランプ肉。滋賀県では繁殖と肥育の一環農家は2割くらいといい中で、サカエヤは顔が見える農家さんで但馬の血統牛でも雌にこだわり仕入れるようにしています。今回のものは屠畜して2週間のフレッシュなものを用意しました。次は農家さんの顔が分からないもの「鹿児島経産和牛」のランプとリブロースの2種です。そもそも経産牛がさほど流通していない中で、サカエヤでは月に100頭くらいの扱いがあります。流通が確立されていないので日本全国のセリで買付けていますが、今回は鹿児島のもので屠畜してから熟成庫にいれ50日経過のものを本日は用意しました。

次は放牧して育てたものです。
今回は実験的なものですが、「(岡山)吉田牧場ブラウンスイス」は12月10日に熟成庫に入れ枯らしたものです。それほど大きさは無いですがしっかり菌のついた状態に仕上がっています。そして流通しているものと毛色が違う熊本の「東海大学産あか牛」。人生の半分は大学生が育て、後の半分は放牧して育てた牛です。今回はともに経産牛を用意しています。最後に「(北海道)駒谷牧場アンガス牛」は、ジビーフと当店では表記する完全放牧野生牛です。沢で水をのみ、自生している草木を食べて育っている牛は、日本では極めて少ない「有機JAS畜産」の認定を受けたものです。

今回の勉強会では、「これが美味しい、これが不味い」ということよりもそれぞれの(個性)特徴を知ってもらい、個体ごとの味わい風味や香りの違いを体験してもらいいと新保氏。特性をしることが提供の仕方やコースの表現方法が変わるはずと話されていました。

Part2:手当するとはどういうことか!?

新保氏の解説

なぜ「手当」を始めたか。言葉がないので「熟成」という表現を使いますが、約20年前に出合った赤身の美味しさに感動したのがきっかけです。そもそも赤身は繊維が堅く風味も無く食感も悪い食べられないお肉でした。しかし微生物の力でその繊維がほどけ、偶然にもそんな美味しいお肉を知ってしまった。それから手がけるようになり、お客さん、料理人の方の知って欲しい、使って食べてもらいたいと想いやり続けてきました。大学の先生方とも微生物の研究をした時期もありましたが、ほぼ独学で今の手当の方法を築きあげました。

実際「手当」は、微生物の力を頼る方法です。食品中には性状の異なる2つの水が存在しています。1つは自由に運動、移動できる「自由水」と言われるもの。もう一つが「結合水」です。これはたんぱく質などの食品成分と結合しているために、自由に運動移動することができない水です。自由水に菌を付け、微生物の力で熟成をさせるのですが、できあがりは予想出来ないのが現状です。失敗するときも多々あります。熟成と腐敗の違いは匂いや、触感でも分かりますが、菌の発生の仕方でも判別でき、その見極めが手当するには大切です。

今回の近江牛は未経産のフレッシュでしたが、経産牛のランプは8回お産した人間で言うならば60歳代のものを使っている。リブロースに限っては10産した70歳代のものを食べてもらっています。本来ならばA5と言われるサーロインなどの方が料理人にとっては扱いやすい。しかし個性ある牛の味わいを引き出すことが手当する醍醐味だと感じます。私はサーロンよりもリブロースの方が味濃く熟成に耐えられる部位が好きです。また「あか牛」と「ブラウンスイス」は同じ熟成庫に入れても種類の違う菌が付き熟成が進みました。なぜ違う菌がつくのかは分からないのが面白いですよね。実際カットするまでは、その仕上がり具合が分かりませんが、ぜひ皆さんも触れて匂いを嗅ぎ分けて見てください(こちらで実際お肉に触れる機会がありました)。

実際触れると腐敗と熟成は違います。熟成庫にリンゴをそのまま入れるのと、スライスしたものを入れる違いと言えば分かりやすいでしょうか。酸化するとリンゴは茶色くなります。それはお肉にもいえる事で、骨から外すと脂分の酸化が始まります。おそらく精肉店から真空パックされて入荷されると思いますがすでに骨から外れた状態。表示には○○日までに消費してくださいとあると思いますが、実際はその期日が経つとさらに切出ししたお肉を真空パックし保存するお店があるようです。そうするとドリップが出てしまう、そのドリップは旨みですので、残念なことになります。意外にも料理人さんがお肉の扱いを知らないのが現状。寂しいですね。やはりその食肉がどこで育ち、どのように処理されてお店に届くのか、美味しいピークはいつかなど、農家の想いや情報をつなぐことが私たちの仕事(手当すること)の意義だと感じます。

Part3:新保氏が目指す”つなぐ人”とは Part4:溝口真哉シェフの料理

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